命の重みが条件で変わる社会では、すべての人が安心して生きられない


性的マイノリティの人々は、どこか遠いところにいるのではありません。身近に存在します。周りに見当たらないのは、いないと思い込んでいるからかもしれないし、「性的マイノリティならきっとこんな見た目や話し方だろう」というイメージにとらわれているからかもしれません。話が面白くて中性的で服装が派手で……という有名人の印象が強いけれど、芸能界や歓楽街ではないところで働いている人もたくさんいます。大半の人は特に目立つ見た目ではなく、公共の施設など日常の生活空間を共にして、すでに一緒に生きているのです。

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先述の法案の件に加え、トランスジェンダー女性に対する攻撃や誤った情報の拡散など、問題が山積する中でのレインボープライドの開催。LGBTQコミュニティへの応援を打ち出している企業などは、まずは自分の組織内で制度を整え、性的マイノリティが生きやすく働きやすい環境を作ることが不可欠です。パレードには与党の政治家たちも参加していましたが、その場ではっきりと「理解増進法ではなく差別禁止法を作ります」と意思を示すべきではないでしょうか。それを避けて笑顔で「味方です」とアピールするのは、イベントを利用しているだけにもなりかねません。

 

レインボーいいよね、私も応援するよ! と思うなら、それが人の命に直結した問題なのだということを、ことに日本では法整備が大幅に遅れており、性的マイノリティはとても弱い立場に置かれているということを見て見ぬ振りはできないはずです。

私は、人が幸せになれる社会に暮らしたいです。人の命が大切にされ、幸せになろうとする個人のささやかな願いが報われる世の中で生きていきたい。他の人と違っていたら仲間外れにされても仕方がないとか、仲間でない人は困っていても放っておいていいという考えが、力を持つ人たちによって大声で語られるような社会、制度が人を守らないような国では誰も安心して暮らせません。それでは、いつ自分が「あなたは今日から仲間ではないので、どうなっても知りません」と言われるかわからないでしょう。力を持つ人のお気持ち次第で人の命の重みが変わるのです。どうして安心していられるでしょうか。

性的マイノリティの差別禁止も、入管法を今の改正案ではなくもっと人権を重視した内容にすることも、日本で暮らすすべての人の命と地続きです。あなたがあなたであることを理由に排除されることがない社会を作るために、避けては通れない問題なのです。

 


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