英連邦は緩い連合体であり、英国王が元首というのもあくまで形式的なものに過ぎません。加えて英連邦各国は、ビジネス面や法制度などの面において英国と共通する部分が多く、これが経済発展に大きく寄与してきました。

かつて英国の植民地だったとはいえ、英連邦に加盟するメリットも大きかった現実を考えると、現代においては一つの歴史としてうまく消化しているのではないかと、私たち日本人は考えてしまいがちです。

ところが現実には、英連邦各国の国民の結構な割合が、英国王室に対して複雑な感情を抱いており、連邦からの離脱や王政の廃止を求めているのです。これまではエリザベス女王という偉大な国王が君臨していたことから、こうした動きはあまり健在化していませんでしたが、女王の死去に伴って各国の本音がストレートに出てきたと考えることもできるでしょう。

王政の廃止を求める声は英国国内にも根強い。戴冠式に合わせてロンドンで行われた、君主制反対派によるデモ行進。写真:ロイター/アフロ

一連の事実から分かることは、どれだけ時間が経過し、かつ相互のメリットが強調されたとしても、支配していた側と支配されていた側には、どうしても心の溝が生じてしまうということです。

 

日本も東南アジアを中心に、かつて植民地をたくさん持っていたことがありますが、国内世論の一部には、各国は日本によって近代化が実現したので、日本に対して感謝しているのだという意見があります。確かにそうした面があるのは事実ですが、人の感情というのはそう簡単に割り切れるものではありません。

ビジネスやプライベートでアジアの人たちと深く交流している人なら体感的に分かると思いますが、例えば親日国として有名な台湾であっても、より親しくなってホンネを言い合える仲になると、日本に対して複雑な感情を持っていることが理解できるようになります。

皇室というのは、とても貴重な存在であり、日本の歴史そのものです。皇室の制度をしっかりと後世に残し、日本が各国とより良い関係を構築していくためには、支配する側とされる側の意識の違いについて、さらに深く理解していく必要があると思います。

 

前回記事「「PayPay改悪」がトレンドに。他社クレジットカード排除の動きに、利用者が取れる対応策は?」はこちら>>

 
  • 1
  • 2