瞬間瞬間を見過ごさずに、意識して「いいな」と思うことがすごく大事

 

ーー門脇さん個人としては、優しい映画が増えたらいいなと思いますか?

演じる立場としては、どの作品でもやることは変わらないので、作品のジャンルやタイプに左右されることはないです。でも、自分が見る立場としては、優しい映画がいいなと思います。思春期の頃は、『オアシス』(2002年/イ・チャンドン監督)のように胸がえぐられる作品が好き、とか言ってたんですけど、年をとるにつれ、温かい物語が見たくなってきました。あと、両親が「明るい映画が見たい」って言うんですよね(笑)。

 

ーー明るい映画に出ている娘さんを見たいということですか?

はい。両親は私が出ている作品を全部見てくれているんです。試写にも来てくれるんですけど、暗い作品のときは、「明るい映画が見たいなー」って言って帰って行きます(笑)。

ーー(笑)。ご両親のお気に入りの作品は?

『シャンティ デイズ 365日、幸せな呼吸』(2014年/永田琴監督)という映画です。特に父親は、何回見てるんだろうっていうくらいお気に入りです。年末、特に大晦日って、みんなで夜通しテレビを見る家庭も多いと思うのですが、うちでは私の出演作を流す「麦まつり」が開催されて、『シャンティ デイズ〜』が必ずかかります(笑)。

ーーかわいいお父様ですね(笑)。先ほど、「どの作品でもやることは変わらない」とおっしゃいましたが、いい仕事をするために門脇さんが心がけてることはありますか?

(しばらく考えて)なんだろう……。“純度”と、“慣れないこと”と、“現場を1ミリでも多く愛せるような要素を見つけること”でしょうか。単純な話で、スタッフのみんなと会話をする、コミュニケーションをとる。その組によって現場の空気が違うので、毎回能動的にその現場を好きでいる態勢でいる。それは昔から変わらない気がしますね。

 

ーー好きだと思うのはどんな部分ですか?

これは感覚なんですけど、忙しいスケジュールの中でもニコニコ喋ってるみんなを愛おしいと思うといった、本当に単純な“人間愛”です。そういう瞬間瞬間を見過ごさずに、意識して「いいな」と思うことが、ちょっとしたことで自分のパワーにもなったりするので、すごく大事だと思います。日常生活もそうですよね。ボーッと景色を見ていたらそれで終わってしまうけれど、(インタビュールームの窓外に視線を向けながら)「5月で緑が濃くなってきたな」と意識的になるだけで違ってくると思うんです。現場ではそれを積極的にやっています。

ーー「緑が綺麗だな」と言語化しているんですか?

頭の中でしています。撮影部のスタッフさんを見て「帽子が3日連続で同じだ」「お気に入りなのかな」とか。

ーーそうすることで、具体的に定着していきそうですね。

そうなんです。やっぱり、ボーッと過ごしちゃうとそれっきりの平らな世界になってしまうので。私は植物が好きなんですけど、草花の名前を覚えておくと、普通に道を歩いているときに「あ! あの花だ!」とうれしくなるんです。そういう風に注意深く生活し始めてから、すごく心が豊かになりました。