「ミレーナ」で子宮体がんのリスクが減るって本当? リスクはないの?


鈴木:そうですね。生理が来て、剥がれるはずの子宮内膜が剥がれずにずっと厚いままの状態になってしまうと、「子宮体がん」のリスクが高まります。ですが、「ミレーナ」を装着している間は、黄体ホルモンを放出し続けるので、子宮内膜が薄い状態を継続できるます。つまり、子宮内膜が厚くならないので、「子宮体がん」のリスクも減る、ということなのです。

 

編集:そうなのですね!

鈴木:子宮体がんの予防目的に「ミレーナ」を入れることはできませんが、副効用(=利点)として、「子宮体がん」のリスクが減る、ということです。

編集:すごいですね! ますます興味が湧いてきます。

山田:ここまでは「ミレーナ」のよいところをたくさん解説いただきましたが、仮にもプラスチックの器具を体内に装着するということで、どのようなリスクや副作用があるのか、あるとするならば頻度はどの程度なのかを教えていただけますか?

鈴木:少し、いいことばかり言い過ぎたかもしれません(笑)。そうですね、まずは、「ミレーナ」ですが、せっかく装着したのに数ヵ月ほどで外れてしまう方が1割ほどいる、と言われています。データ上でも、私の経験上でもそうですね。

また、稀にですが、少し気持ち悪さを感じる方や、初めの3ヵ月は、不正出血を起こすこともあります。このあたりが、早い段階で起こる副作用ですね。

また、避妊効果が100%ではない、ということも付け加えておきますね。99%とは言われていますが、大体500人に1人は、「ミレーナだけ」で避妊をした場合、妊娠してしまう可能性がある、という程度です。

「ミレーナ」を使用すると、子宮内膜が薄くなり過ぎて、3割程度の方は生理が止まってしまいます。それ自体は悪いことではありませんが、非常に稀ですが、生理が止まったのが妊娠である可能性も気にしていただければと思います。

山田:ありがとうございます。 体内に器具を入れるということを考えると、内科医としては感染症のリスクを考えるのですが、いかがでしょうか?

鈴木:そうですね。基本的にはほとんどありません。非常に稀に、のうよう(膿)を作ることもありますが、器具を入れる前に受ける感染症の検査などで問題がなければほとんど心配ありません。

山田:なるほど。ありがとうございます!

編集:山田先生、リスクについて確認いただき、ありがとうございました。 最後に、病院選びの基準について教えてください。「ミレーナ」に興味を持たれた方が、実際にやってみたい、と思われた時は、どのように病院を選べばいいのでしょうか?

鈴木:そうですね。特別な処置ではないので、産婦人科医であれば、誰でもできます。基本的には、かかりつけの産婦人科医に相談していただければと思います。

ただ、一度も産婦人科に行ったことがないし、心配だ、という方は、「女性医学学会」のウェブサイトを参照していただけるとよいかもしれません。この「女性医学学会」が指定する、「女性ヘルスケア専門医」という、女性医学の知識と技能を有する医師がいるのですが、今日お話ししたような月経困難症の管理などを集中して学んでいます。

私もその資格を持っているのですが、お困りでしたらこちらのサイトをご確認いただき、ご自宅の近くの「女性ヘルスケア専門医」を探すこともできるのです。

編集:それは安心ですね!

鈴木:もちろん、「女性ヘルスケア専門医」でなくてはいけない、ということではありませんので、病院を選ぶ際に困ったときは参考にしてみてください。

編集:ありがとうございます! 今日は、「ミレーナ」について知りたかったこと、「低用量ピル」や「IUD(子宮内避妊器具)」との違い、それぞれの特徴やメリット・デメリットについても解説いただき、大変勉強になりました! 

リスクも知った上で、皆さんがご自身にとってベストな選択ができればよいですよね。鈴木先生、山田先生、本日はどうもありがとうございました!
 

 

山田 悠史
米国内科・老年医学専門医。慶應義塾大学医学部を卒業後、日本全国の総合診療科で勤務。新型コロナ専門病棟等を経て、現在は、米国ニューヨークのマウントサイナイ医科大学老年医学科で高齢者診療に従事する。フジテレビライブニュースαレギュラーコメンテーター、NewsPicksの公式コメンテーター(プロピッカー)、コロナワクチンの正しい知識の普及を行うコロワくんサポーターズの代表。カンボジアではNPO法人APSARA総合診療医学会の常務理事として活動。著書に、『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』『健康の大疑問』(マガジンハウス)など。
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構成/新里百合子

 


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