思ったよりもリスクが低い? 白内障の手術


山田:白内障の濁りは、点眼薬などの薬で取ることはできません。日常生活に支障がない場合、眼科の医師の判断によりますが、手術をしないで様子を見ることも多いようです。ただ、車の運転など、日々の暮らしに困っている、という場合には、手術を受けることになります。

編集:目の手術って、すごく怖いイメージです。

山田:そうですよね。ですが、実は内科医としては、比較的リスクの低い手術ととらえているんですよ。たとえば、「白内障」の手術前は他の手術と違い、前立腺の薬や精神科で処方された薬など一部の例外を除いて、ほとんどの薬は続けても問題がありません。血液検査など、事前の検査も必要ないケースがほとんどです。

編集:そうだったのですね! とても意外です。

 

山田:濁った水晶体を取り、その代わりに人工の水晶体(眼内レンズ)を入れるのですが、手術は日帰りのことがほとんどですし、全身麻酔ではなく局所麻酔で痛みも少なく、比較的短時間で終わります。持病があっても、受けやすい手術なんですよね。

編集:なんだか、「白内障」の手術に対するハードルがぐっと下がりました!

山田:目は、いろいろなものを見て、察知し、脳に情報を伝えている大切なアンテナです。そのアンテナが鈍っている、となると、私たち老年医学の世界では、認知症との関連も気になります。

もし「目が見えにくい」と思われたら、すぐにかかりつけ医や、眼科の医師に相談していただくことが大切です。そして、必要であれば手術を受けることによって、まるで曇った眼鏡を綺麗な眼鏡に取り替えた、というような体験ができます。手術を受けられた後の患者さんは、「視界が全然違う!」と言われますね。

編集:実は、私の父も「白内障」の手術を受けたのですが、「視界がハイビジョンになった」と喜んでいました。多くの方にとって身近な病気ですが、手術のハードルが比較的低いことで、少し安心できました。

山田:そうですね。ただ、「白内障」は、何千万人も患者さんがいる割には、きちんとした治療機会が得られていない、ということもよく言われています。目の見えにくさを年齢のせいにしてしまい、受診や治療機会を逃してしまい、結果、失明につながるケースもある病気でもあるのです。

編集:それは心配ですね……。目の見えにくさを感じたらそのまま放置せず、すぐに眼科に行く、という当たり前のことがやはり、大切なんですね。「白内障」だけでなく、目の健康全般にも、気をつけていきたいと思います。本日もありがとうございました!

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写真/Shutterstock
構成/新里百合子

 


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