65歳以上の5人に1人が要介護認定者という現実


相談者・敦子さんの話をする前に、そもそも介護認定ってどうやって受けるの?という話からサラッとしましょう。まず、国の介護保険サービスを利用する要介護(要支援)認定者は686.6万人で、65歳以上の5人に1人が認定を受けています(2023年6月末時点)。介護や支援が必要となった主な原因は認知症が約2割と最も多く、次いで脳血管疾患、高齢による衰弱、骨折・転倒、関節疾患となっています。

これらはすべて目に見えて介護が必要だとわかるものですが、実は要介護認定の申請について考えるきっかけは、「親が一人暮らしで心配」「介護資金に余裕がない」といったものでも構いません。介護サービスを利用する場合は、お住まいの市区町村の介護保険窓口や地域包括センターで申請し、調査員の聞き取り調査や医師の診断を経て認定が下ります。

 


介護認定のやり直しをする方法は?


今回の相談者・敦子さんは、その審査で「要支援2」という結果が出たことに不満があるようです。では、介護認定のやり直しは可能なのでしょうか。

結論から言うとやり直しは可能で、審査請求と区分申請という2つの方法があります。

 

審査請求は時間がかかるので、急ぐ場合は役所に区分申請の請求をする方がスムーズです。その際、主治医の意見書が必要になるので、敦子さんの場合は認知症の診断を出した脳外科医(またはかかりつけ医)に、「認知症の症状が出てきて介護の負担が多くなるにも関わらず、納得のいかない認定結果だった」と伝えると良いでしょう。考慮して意見書を記載いただけると思います。

なお、改めて認定調査を実施することになった場合はぜひご家族が同席してください。本人だけだと頑張りすぎて普通に振る舞おうとしたり、できないことをできると言ったり、体調や気分によって言動が左右されることもあります。普段の様子を正しく伝えるために、同席を検討してみてください。
 

支給限度額は要介護度によってここまで変わる


介護保険では、要介護状態区分(要支援1・要支援2、要介護1~5)に応じて、支給されるお金の上限(支給限度額)が決められています。介護度が重いほど上限額は高くなり、使えるサービスの量も多くなります。

 


要介護度によるサービス提供の違い


支給される金額だけでなく、介護度はサービスの提供内容にも影響します。そこで、介護度によって大きく異なる部分をピックアップしてみました。
 

 ■要支援2→要介護1 
要支援と要介護では、利用できるサービスの種類が大きく変わるため、この境目が1つのポイントと言って良いでしょう。要支援は「介護予防」と「生活支援サービス」のみの利用が可能で、要介護は「在宅サービス」「地域密着型サービス」「施設サービス」が利用できます。また、要介護では複数のデイサービスやデイケアを組み合わせて利用できますが、要支援の方は1ヶ所の事業所しか使えません。
 


【要介護から受けられるサービス】 ■定期巡回・随時対応型訪問介護看護(訪問介護員や訪問看護師が1日に複数回訪問し、介護・看護を提供する24時間対応の介護サービス)
■夜間対応型訪問介護(ホームヘルパーが18~時翌朝8時の夜間帯に定期的に訪問したり、急に体調が悪くなったときなどに対応する随時対応も)
■介護医療院、介護老人保健施設(老健)への入所が可能に
 



 ■要介護1→要介護2 
介護保険では福祉用具のレンタルも利用できますが、中には要介護2からしかレンタルできないものもあります。基本的に、車いすは要介護1では借りられないので注意してください。
 


【要介護2からレンタルできるようになる介護用品】 ■車いす
■車いす付属品
■特殊寝台
■特殊寝台付属品
■床ずれ防止用具
■体位変換器
■認知症老人徘徊感知機器
■移動用リフト(吊り具を除く)
 



 ■要介護2→要介護3 
要介護2と3の大きな違いは、特別養護老人ホーム(特養)への入所が可能となる点です。特養は、65歳以上でかつ要介護3以上の認定を受けた方が対象のため、要介護2以下の方は少し高めの金額を払って有料老人ホームなどの高齢者施設に入居せざるを得ません。

今回の相談者・敦子さんのように、要介護認定の結果が親の現状と異なることもあるでしょう。「あと1つ介護度が上がったらこんなサービスが使えるので親も自分も助かる」といった場合には、介護認定のやり直しも視野に入れてみてはいかがでしょうか。
 


構成/渋澤和世
取材・文/井手朋子
イラスト/Sumi
編集/佐野倫子

 

 

 

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