認知症の4%は難聴が原因? 大音量や不健康な生活習慣に注意!


山田:認知症全体のおよそ4%程度は、難聴が原因であると説明できるのではないか、と言われています。4%と聞くと小さい数字だと感じられるかもしれませんが、日本、世界全体の認知症患者数を考えると、4%だけでも、つまり難聴を取り除くだけでも、多くの方の認知症が防げるかもしれない、ということになりますよね。

難聴は認知症の発症リスクに関わるだけではなく、うつ病、生活の質の低下のほか、様々な病態との関連が知られていますので、高齢者に起こる問題の中でも、とても大きなものです。

 

編集:なるほど……。では、耳の聞こえが悪くなったと感じたら、たとえば補聴器を使用したりリハビリをすることによって、認知症になる可能性は低くなるのでしょうか?

山田:補聴器や聴覚のリハビリが不安や社会的な孤立、抑うつを軽減するということは知られていますが、認知症予防にも有効と言えるかは、はっきりとはわかっていないのです。ただ、少なくとも、難聴と認知症発症リスクには強い相関があるので、聴覚にアプローチをしたほうがいいと、多くの方に考えられているのが現状です。

編集:そうなのですね……! ちなみに、耳の聞こえづらさを感じ始めるのは、何歳ぐらいからが多いのでしょうか?

山田:60代くらいから感じる方が増加しますね。難聴のリスクはいくつか知られていまして、このリスクに該当する方は難聴が起こりやすくなります。代表的なものが「騒音への暴露」ですね。スポーツ観戦、大音量のバンド音楽などの大音量は、それ自体でも難聴を起こしますし、加齢による難聴も促進するということがよく知られています。

編集:私はイヤホンでよくポッドキャストを聞いています。大音量でなければ問題ないのでしょうか?

山田:そうですね。ただ、イヤホンでも、大音量であれば騒音への暴露と言えますので、音量に気をつけていただくことは重要ですね。とにかく大きな音が耳に悪い、という意識は持っていただければと思います。

他にも不健康な生活習慣、喫煙、糖尿病や肥満などの生活習慣病も難聴の発症リスクとして関連すると考えられています。

編集:大音量、気をつけたいと思います。耳が聞こえづらくなったらテレビの音も大きくしたくなると思うのですが、補聴器を使い始めるよいタイミングはありますか?

山田:基本的には、日常生活に支障をきたすような状況が起こった場合に、補聴器の使用を考えます。もちろん補聴器以外のアプローチもありますが、日常会話でご家族や友人が聞き返しが多くなったなどの変化を感じてきた場合、ご本人に耳の聞こえが悪くなってきたという自覚がある場合は、検査や治療を考え始めるタイミングと言えますね。

ただ、難聴も普通の病気と同じく、原因の特定が非常に重要です。原因によっては補聴器ではなく別のアプローチが有効な場合もありますので、ここで難聴の種類について追加で説明させていただきますね。