「1」の弱点克服より、「5」の得意を最大限にフィーチャーする


――企業ではどうしても、全方位で標準点が取れる人、レーダーチャートできれいな五角形を作れる人が評価されますよね。何か突出している人が「苦手な部分だけ」を見られて低い評価をされたり、苦手な仕事を振られてしまったりしてしまうのが、とてももったいないと感じます。

山本 ある面では5なのに、ある面が1だからダメ、と弱い方に引っ張られる評価ではなくて、ここに5があるじゃん! ここをもっと伸ばそうよ! っていう評価は自己肯定感も上がりますし、その状態であれば、弱みについても意識を向けられるようになると思うんです。自分の強みを自分で分析することはなかなか難しいですから、他者を通して発見する機会を得ることで、「得意」の先にある「好き」も見つかる可能性があります。自分自身の得意や好きが分かれば、当然いい仕事にも繋がっていくはずです。

 

誰もが無理をせず、補い合えるのが理想


――色々な特性を持つ人や多様な働き方の人がいる職場だと、「誰かができないことを補う」ことに対して、「犠牲を強いられている」と感じる人もいるのではと感じます。障がい者の方と働いた経験がない場合、健常者の方のそうした葛藤も発生し得るのではと想像するのですが、御社の場合どのようにバランスを取っていらっしゃいますか。

山本 弊社の場合は、私やマネージャー以外は障がいを持ったメンバーがほとんどなんです。だから元々マネージャーたちには、「何かあったときに補うのが自分たちの仕事」という意識があります。ですが、環境面や精神面における合理的配慮をマネージャー側がすることがあっても、見方を変えれば業務ではメンバーの方が得意なこともあったり、会社全体で見ても様々な場面で、お互いの得意と苦手を相互に補う関係性ができています。そして、こうも思うんです。障がいの有無にかかわらず、フルタイムかつ100%の力で働けないことは、誰にだって起こりうる。だからそもそも、誰もが無理をしない働き方で、お互いが補い合えるような環境にしていくことが大事なんじゃないかと。

 

山本 私自身、子どもを妊娠したときも、周りに迷惑をかけまいと必死でした。今になって思うと、そんなことで心苦しくなる必要はなかったとわかります。出産、介護、自分の病気や障がい……いつ自分が「補われる側」になるかわからないですし、誰かが一方的に補い続ける、補われ続けるものではなく、結局「おたがいさま」の話ですよね。

だからいざというときだけじゃなく、普段から仕事を一人で抱え込まず、周囲に「助けて」と言うことで、相手も私に「助けて」と言いやすい関係を作っていく。そうやって助け合える文化や雰囲気を社内で醸成していくことが、会社として必要なことなんじゃないかと思います。