日本で生み出したもので世界を目指す

 

——来年ご出演になる舞台『イザボー』では母親役を演じられますよね。まずは日本からオリジナルミュージカルを発信していこうというプロジェクト(MOJOプロジェクト -Musicals of Japan Origin project-)の第一弾だと思いますが、お話があったときの気持ちを教えてください。

望海 末満健一さんと一緒に作品をつくるのも初めてですし、日本オリジナルのミュージカルに参加できるのも嬉しいですし、楽しみしかない! という印象です。日本で生み出したもので世界を目指そう、高い山を登っていこう、というプロジェクト自体が本当に素晴らしいと思うんです。

おっしゃる通り、この作品はプロジェクトの第一弾なので、試行錯誤の毎日が待っていると思いますが、エネルギーがみなぎるというか……(笑)。どんどん日本から発信していけたらいいですよね。

 

「悪女」で新境地を開く舞台、甲斐翔真さんの存在

 

——母親でありながら、イザボーはフランスを傾かせてしまった「悪女」でもあります。

望海 そうなんです。今まで退団してから参加した作品は楽しんでもらう要素が多かった気がするので、ガッツリと深いところまで掘れる作品は久しぶり。どこまで深掘りできるのかそれも楽しみですね。

——そして、共演の甲斐翔真さんとは母親と息子(ネクスト・トゥ・ノーマル)、恋人役(ムーラン・ルージュ!)を経て、また親子関係を演じられることになりますね。

望海 一度会ったきり、なかなか再会しない役者さんも多いなかで、これだけ一緒にできるというのはとても嬉しいし、安心。この親子関係は少し特殊なので、「初めまして」でつくり上げるより、ある程度知っている仲でつくるほうがいいのかなと思っているんです。しかもかなり重要なシーンもありますし、それぞれが自分自身できっちりと空気感を醸し出しておかないといけないので、翔真くんを知っているというのはすごく心強いですね。

——望海さんからご覧になった甲斐さんはどんな方ですか?

望海 すごく真っ直ぐな方。作品に対しても、役に対しても、誰に対してもすごく真っ直ぐに向き合っているという印象です。なので、信頼のおける人だと思いますし、若いからこそできるエネルギーに満ちあふれているんですよ、翔真くんは。私はもうそれをちょっと失くしてしまっているので(笑)、一緒にやっているとそれを思い出させてくれる存在でもあります。

——甲斐さんはまだ20代半ばですものね。

望海 特に『ネクスト・トゥ・ノーマル』のときの親子関係にあったピリピリ感などは、つくり出すというよりも翔真くん自身が出してくれる空気感によって生まれていたと思うんです。そういう、作品に対する素直さみたいなものをずっと持ち続けてくれるのは素晴らしいな、と。

あとは、たまに投げかけてくる「これってどうなんでしょうね?」という疑問が、ものすごく核心を突いていたりするんです。恐ろしい人だとも思います(笑)。

でも、基本的には一緒にお芝居をすることが楽しいと思える相手なので、翔真くんとの関係性は咲ちゃん(※)とのそれと似ているかも。まったく同じではありませんが、ずっと同じ相手とお芝居をしているけれど、役が変われば雰囲気も変わるし、信頼しているけれど、今日は何が来るんだろうというワクワク感があるという……。今回はあまり直接関わるわけではないのですが、それもまた楽しみではあります。

※現在の宝塚歌劇団雪組トップスター・彩風咲奈さん。望海さんが雪組で男役トップスターのときに二番手を務めた。