誰もが、手を差し伸べられるようになるには


山口 でも、例えば会話に入れない時とかに、手を差し伸べてくれる人もいるんだよね。だから今は私も、自分からは話さない子の話こそ聞かないといけないと思っています。信州大学の授業でも、昔は、当てて5秒話さなかったら放送事故だよくらいに思っていたけど(笑)、そういう子ほど、待ってみたら面白いこと言ったりするし。発言はしなくてもレポート書かせるとすごくしっかり書いてきて、ここが良かったと褒めればどんどんレポートも良くなって、授業中の発言の精度も増していって、そうやって伸びていく子もいる。

中野 まさにそういうのがマイノリティが直面する問題ですね。教育社会学では、たとえば教師に「女の子は算数が不得意」というステレオタイプがあることで、授業中に女の子のほうが声がけをされていないとか、女の子を当てて答えられないとすぐに次の子に行っちゃうんだけど、男の子の場合は待つといった対応の差があることが指摘されています。

 

山口 そういうサイクルで、マジョリティはどんどん伸びるんだよね。ハーバードでも、やっぱり発言するのは白人のハンサムな男の子たちが多かったです。それで評価されて、どんどん磨かれる。マイノリティの友達は「地元に帰ると背が伸びる気がする、ハーバードに戻ってくると背が縮む気がする」と言っていました。

中野 今のお話を聞くと、マイノリティの経験だけでなく、マイノリティになったけどそこで手を差し伸べてもらったという経験があることで、他のマイノリティに手を貸せるようになるのかもしれないですね。マジョリティ性を多く持つ人にだって、マイノリティ性はあるはずで、逆もしかりで。そういうところからお互い手を差し伸べられるといいですよね。

第1回の、もっと助けてって言えばよかったという話ともつながりますかね。渦中にいる時には難しいからこそ、回顧的にでも語っていくことに意義があると思います。

 

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<書籍紹介>
『挫折からのキャリア論』

山口真由・著 日経BP・刊 1870円(税込)

東大を全優で卒業し、財務省に入省。その後、米ハーバード・ロースクールを卒業してNY州弁護士登録ーー。どこから観ても完璧に見えるキャリア、しかしその裏には、山ほどの失敗と人知れぬ悩みが。時間がかかった「自分探し」の末に見つけた「キャリアの軸」とは? 悔しい挫折や失敗を乗り越えて、前に進むエネルギーに変える「飴玉メソッド」も紹介。


撮影/塚田亮平
文/中野円佳
構成/山崎 恵