刺激的でなければならないK-POPと真逆で、トロットは人の心に沁みること、声や目線で人の気持ちを動かすことが重要


――ノスタルジックな楽曲でオーディションを行う『トロット・ガールズ・ジャパン』は、その真逆に位置していると言えますが、挑戦者を評価した基準とは。

チョン:音程とリズムが合っているというのも重要ですが、歌の感性を伝えるのが一番大切ではないかと思います。K-POPの音楽は刺激的でなければといいましたが、トロットは真逆で、人の心に沁みること。声や目線で人の気持ちを動かすこと。優勝した福田未来さんも、そういう点で評価されたのだと思います。

――福田さんが評価されたポイントを具体的に教えてください。

チョン:決勝戦で松崎しげるさんの「私の歌」で勝負したのですが、福田さんの歌に、幅広い人たちが自分の人生を振り返ることができるような、慰められるような感覚を覚えました。つらいこともあった人生を振り返りながら、乗り越えようとする気持ちに、聴く人が共感したのだと思います。手が震えていたのですが、そんなところもすごく良かったです。

『トロット・ガールズ・ジャパン』決勝戦で松崎しげるさんの「私の歌」を披露し優勝した福田未来さん

――決勝に残った出演者についてのエピソードがあれば教えてください。

チョン:今回韓国とは違うシステムだったのが、オーディションに落ちた人も復活できるシステムにしたことです。決勝で「銀河鉄道999」を歌った松永実優さんは、一度落ちたにもかかわらず投票を集めて決勝戦に出て。感動的でした。

また、キム・ソヒさんは韓国でかつてアイドルだったのですが、日本で成長していく姿が胸を打ちました。日本語で歌うのは初めてでしたが、一生懸命な姿を審査員たちも評価していました。
 

 


『トロット・ガールズ・ジャパン』決勝メンバーが韓国TVで日本語歌曲を披露


――この番組を機にデビューする人もいますが、どんなことを予定していますか。

チョン:日韓戦です。『トロット・ガールズ・ジャパン』で決勝に残った人たちが、韓国のオーディション番組『現役歌王』の入選メンバーとバトルをする番組『日韓歌王戦』の撮影を進めています。両国の歌手が一緒に歌い合い、互いの国の歌を披露する日韓親善トロット番組です。

MBNという総合編成チャンネルでオンエアされるのですが、地上波に近いチャンネルで日本の演歌や歌謡曲が放送されるのはきわめて稀なことです。もしかすると、韓国史上初めてかもしれません。演歌の影響を受けてトロットが生まれ、韓国のオーディション番組として日本に戻る。そして、韓国の舞台で歌われる。こんなふうに音楽で交流するのは、感慨深いです。

――最後に、ミモレの読者層である40代半ばの人にセールスポイントを。

チョン:良い歌は長く残ります。それを若い世代が歌うと、さらに感動が大きくなる。世代と時代をつなぐ何かを一緒に感じていただけると嬉しいです。


インタビュー前編
“BTS最大のライバル”イム・ヨンウンが歌う「トロット」って何?『トロット・ガールズ・ジャパン』Pが徹底解説>>
 


取材・文/桑畑優香
構成/露木桃子