ギフトシーズンに突入。気の利いた絵本のギフトはいかがでしょうか。日々、絵本と向き合っている講談社・幼児図書チームの絵本編集者たちが自信を持ってすすめる絵本をリレー形式でご紹介。ぜひご参考になさってくださいね。

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お世話になった人、仲良くしてくれた人、これからもっと仲良くなりたい人にちょっとしたプレゼントを考える時間って楽しいですよね。
ながめるだけで(そして、買うときにも!)やさしい気持ちになれる絵本は、クリスマスーシーズンの気軽なプレゼントにぴったり!
心をこめて、ちょっぴりウンチクも傾けつつ、今年は絵本を贈ってみませんか。

人生の折々読み返したい、元祖おとなの絵本

「100万回生きたねこ」 佐野洋子:作・絵

まずは新米絵本編集者のKがおすすめするのは、名作『100万回生きたねこ』。

なんと228万部の大ベストセラー! 読んだことはなくても、タイトルは聞いたことがあるという人が多いはず。なにを隠そうこの6月に、児童書の部署から絵本の部署に異動してきたばかりのわたしも当然、このとらねこの存在は知っておりました。自慢じゃないですが、家にも一冊あります! 
どれだけ愛されている本なのかは、『100万分の1回のねこ』というトリビュート短篇集に名だたる13人の作家さんたちが書いていらっしゃいますので、小説好きの方は、ぜひご一読ください。
(江國香織、岩瀬成子、くどうなおこ、井上荒野、角田光代、町田康、今江祥智、唯野未歩子、山田詠美、綿矢りさ、川上弘美、広瀬弦、谷川俊太郎という錚々たる方々)

 

絵本は趣味のものだと個人的に思っていますので、贈るのはなかなか難しいですが、この絵本なら、老若男女、善人悪人、贈る相手は問いません。それぞれにおもしろい感想が聞けること、請け合いです。

この作品は、人生のどこで読むかによって、感想が変わる絵本です。最近、ふと思いついて高校生の息子に読ませてみたら、「泣ける。」と言ったのにはびっくりしました。子どものときには、げらげら笑っていたのに……大人になったなあ。

かっこよくて深い、人生の折々読み返したい、元祖おとなの絵本なのです。
日々仕事でいそがしくしている彼に、「あなたみたいなパワフルなとらねこが出ているよ」と贈るのにもぴったりの1冊。
でも、ほんとは好きな男性からもらったらうれしい1冊なんですよね。それは、読んだ人にしかわからないけれど(笑)。

文学、哲学が好きそうなあの人に

「くるみのなかには」たかおゆうこ:作

いつまでたっても少女のような、絵本のことはなんでも知っている編集Nの推薦はこちら。

「文学、哲学が好きそうなあの人に選びたい、美しいしつらえの1冊です。めくる楽しさにみちていて、想像力が刺激されること、まちがいなし。絵本屋さんでカバーを見せて置かれていることも多くて、ありがたいです。
贈りもので渡すときには、『今度、”くるみのなかにはなにがある?”って聞くから、あなたの感想を教えてね』と、言葉をそえてくださいね。
もちろん、あなたもこたえを用意しておいてください。」

うーん。繊細な絵本を作る人は、説明も繊細です。この本は持った感じもしっとりしてていいですね。

次は、カメラマンでもあり、センス抜群の若手編集Sの推薦。

冒険家・石川直樹さんとつかのま地球旅行気分!

「ぼくたちは みんな 旅をする」 ローラ・ノウルズ:文 クリス・マッデン:絵 石川直樹:訳

「旅好きな人におすすめです。冒険家の石川さんの翻訳だから、絵本なのに説得力があるんですよ。もちろん、内容はすべてノンフィクションで、動物たちのたくましさにわくわくして、元気が出る絵本です。
どこからでも読めるから、今日はコウテイペンギン、明日はオサガメ、と好きな見開きを気ままに読んで、つかのま地球旅行気分を味わってください。クリス・マッデンの絵は、インテリアとしても素敵ですよね。」

さすがセンスのいい人は、絵本をインテリアとしても考えるわけですね。
たしかに、こんな本がさりげなく飾ってあったら、いい感じです!

お次は、編集部一のベテラン絵本編集者O。
いくつも候補があがったのですが、最終的に選んでくれたのはこちら!

お疲れ・寝不足ぎみのあの人に贈りたい

「みまわりこびと」 アストリッド・リンドグレーン:文 キティ・クローザー:絵 ふしみみさを:訳

「仕事でいつも寝不足の友だちに贈りたい本。
”みまわりこびと“さんが、大事な友だちをぐっすり寝かせてくれるかもしれません。
リンドグレーンときいてピンとこない友だちには、『長くつ下のピッピ』を書いた人よ、と教えてあげてくださいね。12月からリンドグレーンが主人公の映画も公開になるので、絵本を気に入ってくれたら、一緒に映画を見ない?と誘うのもいいかもしれません。
絵のキティ・クローザーには、『ちいさな死神くん』や『あるひぼくはかみさまと』などの絵本があり、リンドグレーン記念文学賞などを受賞しているアーティスト。やわらかい筆致とシックな色合いで描かれたこの本では、ページをめくると北欧の静かなクリスマスの世界にひたれます。」

おおお、なんだかすごいです。
絵本 オブ ザ 絵本! という感じなんですね。
小さいお子さんにも安心して渡せそうなクリスマスの物語です。

最後はふたたび、編集Nから。

ディック・ブルーナの愛蔵版はアート好きのあの人に

「愛蔵版 クリスマスってなあに」ディック・ブルーナ:作

「キャラクター好きな人にあげたら、”わ、かわいい!”ってぜったいに言われそうなクリスマス絵本です。
かわいいだけでなく、デザイン好きな人にも一目おかれるオランダの大人気作家、ディック・ブルーナの作品です。ロングセラーの通常版は20万部も売れている大人気の本ですが、大人ですから、特別感のある愛蔵版を選びたいですね(それでも1500円!)。
子どもの頃のミッフィーの思い出話を語り合うもよし、自分がもっていたミッフィーグッズの話でもりあがるもよし。
ブルーナさんの絵の線は、単純に見えて、手書きで書いている唯一無二の線なんですよ。」

ブルーナさんは、おしまれつつ、2017年にお亡くなりになったのだそうです。新しい作品が見られないのが残念ですが、みんなの心にあのシンプルでかわいい絵は、ずっと残っていくのでしょうね。

大人が大人に贈る絵本5冊、いかがでしたか。
絵本を贈ったことがある方は、どんな絵本をどんな方にさしあげたのか、ぜひ教えてください!
そう、この国には、まだまだ大人の絵本が足りないのですから。

大人の絵本はここで手に入れる!
この冬『100万回生きたねこ』を贈る フェア実施中 (丸善 池袋店)

 

2019年11月1日~1月9日まで、丸善 池袋店2階で
「この冬『100万回生きたねこ』を贈る」フェアが開催中!
期間中、絵本『100万回生きたねこ』を店頭で購入された方には、オリジナルメッセージカードの特典が。

 

クリスマス仕様の真っ赤なカバーがかかった『100万回生きたねこ』は、プレゼントにもぴったりです。フェアコーナーには、『100万回生きたねこ』のジークレー(デジタル版画)の展示や、オリジナルグッズの販売、また佐野洋子が手がけた全書目がならぶ予定。

さらに、1階のマルゼンカフェでは、11月23日から『100万回生きたねこ』コラボメニューが登場、すてきなノベルティも予定されています。

 

丸善 池袋店は、 池袋駅西武南口から歩いて徒歩2分。1階マルゼンカフェの入口にある、本物の電車が目印。ぜひ遊びにきてくださいね。

詳細情報
▼絵本『100万回生きたねこ』が丸善池袋店をジャック!
『100万回カフェ』が期間限定オープン

試し読みをぜひチェック!
▼横にスワイプしてください(実際の絵本は右開きです)▼

絵本の情報
(ホームページ)
講談社絵本通信 http://ehon.kodansha.co.jp/
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絵本通信 https://www.instagram.com/ehon.kodansha/
(ツイッター)
絵本通信 https://twitter.com/kodansha_ehon


文/日下部由佳(講談社)