今回は、私の住む街、ニューヨークのコロナウイルス感染の現状について記したいと思います。「ニューヨークで感染者数増加」「ロックダウン再開」などという報道を目にした方も少なくないかもしれません。しかし、実際に住んで目にしている景色は、報道から受ける印象とは少し異なります。ニューヨークの状況を現場からお伝えします。

 

「全米最悪の州」が、今では下から6番目の感染者数に


ニューヨークの感染流行状況は、4月頃には全米で最悪の州の一つでした。しかし、その後はかなり落ち着きを見せており、現在は比較的感染者数が少ない状況を維持しています。

ニューヨーク州全体での1週間の新規陽性者数は9700人で、人口10万人あたりでみると、約50人。他の州と比べてみると、下から数えて6番目です。ニューヨーク市内では、1日あたり約400人の新規感染者が報告されています(参考1)。春のニューヨークや他の州の現在の状況と比較すると、かなり良好な状況です。

これはひとえに、ニューヨークの疫学的介入と実現の成果だと考えられています。コロンビア大学の研究結果によると、ニューヨークで行われたロックダウンは、70%の感染者数減少をもたらしたと試算されています(参考2)。

また現在、バスや電車などの公共交通機関はマスクの装着が必須になっており、マスクをしていないと罰金を課せられることになっています。スポーツジムやスーパーマーケットなど、屋内施設のほとんども入店時にマスクの装着を義務づけています。このような背景から、街中を歩いていても、マスクをしていない人を見る方が珍しいという状況です。

レストランは屋外座席が中心になっています。ニューヨーク市内では、一部の道路を封鎖し、飲食店のために開放しています。こうやって屋外の座席スペースを確保しているのです。また、屋根やヒーターを準備するなどして、雨や寒さ対策も行なっています。

9月30日からは、店内飲食も再開になりました。とは言っても、入店できる人数は全体の25%まで、バーカウンターの利用禁止などの制限付きです。また、店内飲食を再開したレストランには、入店時の体温チェック、利用客の連絡先の取得、座席に座るまでのマスク装着なども義務付けられています(参考3)。

しかし、これだけの対策をとっても、感染者数は10月に入ってから再び緩徐に増加傾向を見せています。まだ、医療機関で働いていて患者数の増加を感じさせるほどの変化というのはありませんが、数字は少しずつ変化を見せているのが現実です。
 

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