「ぐらぐらポイント 男の手の仕草」


感情がほとばしる美しい手より、人となりを想像させるアイテムが光る手より、女性を翻弄する、まさに「king of 魔物」ともいうべき男の手。
その代表格が職人さんの手だと私は思います。

中でも左官という技術を芸術の域へと高め、世界にその名を轟かせる職人、挟土秀平氏。

NHKの大河ドラマ「真田丸」の題字を仕上げた人と言えば、思い出す方もいるでしょう。

左官は、もともとタイル貼りやレンガ・ブロック積み、コンクリートの床仕上げ、塗り天井などを手がける地味な仕事。
それを芸術に昇華させた彼の手は、決して細いわけでもなく、アクセサリーなどひとつもありません。
むしろ、ゴツゴツしていて、いつも汚れている。

けれどその手の、なんと美しいこと、力強いこと!
太い節にどれだけの汗と涙、そして自信とプライドがしみついているか、小手を持つ手を見る度に、涙が出そうになるのは私だけでしょうか。

 

あなたの側にも、そんな手を持つ男がきっと、いるはずです。

例えば、どうしても今日中にしあげなければならない書類があった時。
本気モードになった男は、おもむろにシャツの腕をまくります。

 

露わになる筋張った腕。
どうしようか悩み、無造作に頭をかく手。
考えながら誰かに指示を出す人差し指。

ただ目的に向かって、まっすぐに。そんな仕事に邁進する男の手は、無意識ゆえの美しさが宿ります。
どんなにずんぐりむっくりであろうとも、指毛が生えていようとも、ああ、この人のために何か出来ることはないものか。
そんな気にさせてしまうほど女性の心をぐらぐらと揺さぶるのです。

くう~っ、たまらん!

私事で恐縮ですが、いつものように男だらけの会議に出席した日のこと。
普段はデキるはずの男が、珍しくバキ打ちされたことがありました。
彼はどちらかというとがっちり系、神経質そうな狐目に、こぶりな眼鏡をかけた男。
仕事は出来るけれど、はっきりいって私の好みではありません。
その彼が会議の合間の休憩の際、喫煙室でふと煙草に火をつける姿をみかけたのです。

 

長いとは言えない指の間から立ち上る煙。
親指を顎に添え、煙草を弄ぶように、ゆっくりと動かす人差し指と中指に、私はなんだか胸が痛くなったのを覚えています。

会議中、何も言い返せなかった悔しさを、必死に抑えているような。
ここからどう修正すべきか、静かに思いを巡らせているような。

全く好みではない男が、もしかして好みかも、いや、私の知らないあなたをもっと知りたいかも……不覚にもそう思った瞬間でした。
 

「女性の心を柔らかにしてくれる、本当に必要な男の手とは?」


確かに繋いでくれる男の手も、頭をなでてくれる男の手も嬉しい。
けれど、それは可愛いとか、お疲れ様とか、そんな意味が込められた、まさに相手から女性に与えられる手。

そうではなく、自らが心から、その人に興味を持ち、考えようとする手は
「決して触れられない男の手」
それこそが、「女性の心を柔らかにしてくれる、本当に必要な男の手」だと私は思うのです。

この人はどんな人生を歩んできたのだろう。
この人はどこに向かっていくのだろう。

触れられないからこそ、限りなく広がるそんな妄想は、土の時代、わしわしと働いて、何かと男性を厳しく判断する事になれた私たちに優しさを与えてくれます。
束の間、笑顔にしてくれます。

もしも決して触れられないばすの手が、万が一、触れたとしたら。
日頃の妄想癖で鍛えられてきた私たちは、にちゃっとした汗を感じた瞬間、コイツはアウト!などと簡単にぶった切ることはないでしょう。

妄想によって作り上げたそのキャラと、にちゃっとした汗の手とのギャップ、これは、一体、何なんだ……そんな、人をさらに深掘りできる心の余裕と優しさを持っているはずだと思うのです。

ああ、私は今日も求めてやみません。

 

私の心の扉を強引に開け、さあ、僕の人生、想像してごらん。
そんなくらくら、ざわざわ、ぐらぐらさせてくれる男の手を。
 

まさむーさん

食う、飲む、寝る、一気に仕事。
そしてまた食う、飲む、寝る。時々、悩んで すぐ忘れる。これが私の特技です


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