尻餅をついて背骨を骨折することもある


このような理由から、加齢とともに骨折のリスクが加速度的に増加し、尻餅をついたぐらいで一見丈夫そうな背骨が折れてしまうこともありえます。また、加齢によって回復も遅くなるため、一度骨折すると治りにくくなります。このため、長期にわたって痛みが続く場合があります。

尻餅をついた後から腰に痛みが出て、痛みがなかなかひかないという場合にはこういった骨折の可能性を考える必要があり、要注意です。

 

この他に、腰の骨の感染症やがんの骨への転移でも同様の腰痛が出ますが、実際にこれらの原因が見つかるのは、腰痛を持つ人全体の1%にも満たない確率です(参考文献3)。また、これらの場合、前者なら発熱や悪寒、後者なら意図しない体重減少などの症状が出ることが多くなりますので、そういった症状から区別をしていくことになります。

 

このように、「腰痛」といっても原因は様々ですので、一概に「老化現象」ということはできません。また、老化によるものと短絡的に考えてしまうと、重大な病気を見逃してしまうことにもつながりかねません。すぐに老化と決めつけず、腰痛以外にどのような症状があるかを見極め、まずは原因をしっかりと特定することが大切なのです。
 

参考文献
1    Chan GK, Duque G. Age-related bone loss: old bone, new facts. Gerontology 2002; 48: 62–71.
2    Giangregorio L, Blimkie CJR. Skeletal adaptations to alterations in weight-bearing activity: A comparison of models of disuse osteoporosis. Sport. Med. 2002; 32: 459–76.
3    Deyo RA, Rainville J, Kent DL. What can the history and physical examination tell us about low back pain? JAMA 1992; 268: 760–5.

 

写真/shutterstock


前回記事「「腰痛」経験者は8割以上!原因は加齢?【医師が解説】」はこちら>>

 
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