スタイリングディレクター大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』より、「変化を恐れず自分軸で生きるアイデア」を一日ひとつずつご紹介します。

 

大学選びのころから、計画を立ててつかんだ編集者生活ですが、わずか5年弱で辞めてしまったという経歴は、見る人によっては「もったいない」と思われるかもしれません。 もちろん、あと3年は意欲的に働けたでしょう。ただ「5年後もここにいることにワクワクしていられるか?」と聞かれたら、答えはNOでした。  

 

飽きっぽいのは、自覚しているのですが、飽きたことを続けてしまうことが一番怖い――そんなふうにも思っています。
だって、飽きてしまったものには、100%の力なんて注げないし、飽きた先には進化なんてないと思うから。  

仕事の場面でも、クライアントによく言います。
「もうこの手法には飽きてしまったから、違う方法でいきませんか?」と。もちろん、そう言うからには、第2、第3と、角度を変えた手法をちゃんと用意しておきますが、自分が飽きてしまったものを、消費者、読者――私にとって大切なお客様に伝えることは、一番したくありません。
成功した事例や体験を手放すことが、怖い。その気持ちもよくわかります。私も少し前まではフリーランスでしたし、いまだってスタッフを2人抱える小さな会社の経営者です。彼女たちにお給料をしっかり払っていけるのかは、私が受ける仕事しだい。
だけど、そんな不安もかき消してしまうほどに、飽きたものを人に伝えることはしたくない。顔にも言葉にも出てしまう、というのもあるけれど(笑)。飽きたものを出し続けていたら、いずれは自分自身が、そしてその仕事が飽きられてしまうから。
とくに私は、メディアを通じて仕事をしています。メディアはナマモノ。どんどん変わっていくべきだと思っています。
1週間前に面白い! と思っていたことも、今日は、霞んで見えるなんてことは、よくあることです。
かつて、ファッションディレクターや編集長として雑誌やウェブ媒体に携わっていたときには、企画のタイトルやコンセプトは責了まで変わるものだと編集部員によく話していました。
むしろ、最初から最後まで、同じ企画コンテで進み続けられるなんて、あり得ない! そう思っています。  

立ち上げから関わり、サイトオープンから3年間、編集長を務めさせて頂いたウェブメディア「mi-mollet(ミモレ)」(詳しくは第2章で語らせてください)の編集部メンバーからは、
「大草さんは、飽きる自覚があるから、飽きる前に変わっていく」
なんて言われます。確かにそうかもしれません。
惰性や無理をして、ごまかしながら何かをすることは、私にとっては、時間の無駄使い。そんなことほど、失礼なことはないと思うのです。  

「飽きる」という言葉だけをとると、とてもネガティブなワードに聞こえますが、私にとっては、飽きることは次に進むためのアクセルみたいなもの。
自分が面白いと思うかどうか――この問いに即座に答えられないのなら、それは、飽きている証拠。そこに力は発揮できないと思っています。
進化するために飽きていく――この感覚は一生大切にしたい、そう思うのです。  
 


出典:大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』(講談社刊)
取材・文/畑中美香


覚えておきたい!
大草直子の「自分軸で生きる方法」

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