スタイリングディレクター大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』より、「変化を恐れず自分軸で生きるアイデア」を一日ひとつずつご紹介します。

 

「ミモレ」の編集長を3年で辞めるとき、周りには「もったいない」と言う方もたくさんいました。順風満帆にメディアが成長していたので、普通ならそう思うのは当然だと思います。ただ、私は、前のページで述べた理由に加え、成功してふかふかになった芝には物足りなさを感じてしまうのです。
それに、私がやりたいことは、ファッションという自分が得意なツールを使って、皆さんがもっとラクに生きられるようなお手伝いをする、その一点です。だから、編集長になることがゴールなわけではありません。
そうやって道筋を立てて考えていたからこそ、「ミモレ」の編集長も、3年で! と区切りをつけられたのです。  

 

一番はじめに勤めた会社を辞めるときも、次が決まっていたわけではありませんでした。また、フリーランスとして約10年お世話になった「グラツィア」では、編集長の交代とともに雑誌の方向性が変わり、いわゆる〝クビ〟を経験したこともあります。でも、そのあと不思議と別のワクワクするような仕事が舞い込んでくるのでした。
また、「ドレス」のファッションディレクターを辞めようか迷っていたときも、次が決まっていたわけではなかったけれど、手放したら「ミモレ」からお声がかかりました。時には勇気を持って手放して、新たなスペースをつくることも大切。
もちろん、家族も背負っているし、安定したギャランティを捨てる怖さはゼロではありません。だけど、経験として「ひとつ手放せば次が入ってくる」――そう信じています。
特にフリーランスで仕事をしていると、なかなか仕事を断れないという話は、後輩のスタイリストやエディターからよく聞きます。
そのときに私が話すのは、 「数年後も、その仕事やプロジェクトを、最初と同じ情熱を持ってやっていられるか」――それを考えたほうがいい、と。もし、自身のスケジュールが管理しきれないほど忙しかったり、新しいアイディアが湧いてこないとしたら。それは手放すべき何かがあるのだと思います。ひとつ手放して、そして、空いた時間で、キャリアメイクを考えてみて欲しい。  

手放すことは、おしゃれも同じだと思っています。
洋服だって、クローゼットがパンパンだと、新しいものを入れるスペースがないばかりか、自分の手元にどんなワードローブがあるのかさえわからないもの。それが毎日の洋服選びに迷いを生じさせたり、おしゃれを面倒なものにしてしまうのだと思います。 キャリアメイクに限らず、空気を循環させるように、時には勇気を持って手放すことを、物や情報のあふれる時代こそ、意識してやっていきたいなと思うのです。
 


出典:大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』(講談社刊)
取材・文/畑中美香


覚えておきたい!
大草直子の「自分軸で生きる方法」

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