スタイリングディレクター大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』より、「変化を恐れず自分軸で生きるアイデア」を一日ひとつずつご紹介します。

 

「直子はスタイリストじゃなくて編集者だよ」――このひと言が「アマーク」を立ち上げるきっかけになりました。
この言葉をくださったのは、スタイリストであり、ファッションブランド・マディソンブルーのディレクターでもある、中山まりこさんでした。スタイリストの先輩として尊敬するとともに、同志のように仕事や未来のこと、家族のことについて語れる、私のメンター(助言者)的存在です。

 

それはちょうど、「ミモレ」の編集長を辞める前後のころでした。
3年で辞めるとは決めていたし、公言もしていましたが、具体的にこの日と決めていたわけではありませんし、その後も未定。ただ、私のなかでは、何かメディアをやりたいな、とは思っていましたが、具体的にはどうすればいいのかわかりませんでした。
――そんな話をまりこさんにしたときに言われたのが、
「あなたはスタイリストじゃなくて編集者だから、言葉の人だから、絶対にメディアを立ち上げた方がいい」という、ひと言でした。それを聞いて、「ああ、そうだった。私は言葉の人間だった」と、すべてが腑に落ちたような感覚になったのは、いまでもよく覚えています。
確実にそのひと言が、自分のメディアを持ちたい――とずっと思っていた私の気持ちに火をつけてくれ、「アマーク」へとつながっていきました。

また、「グラツィア」の編集長だった故・温井明子さんも、忘れられない言葉をくださった、ありがたい助言者のひとりです。
それはまだ30代だったころ、講談社が久しぶりに中途採用をするというときに、温井さんから「誰かいい人知らない?」と聞かれたことがありました。
当時は子供も小さかったので、会社員として安定して仕事ができることは、私にとってはとても魅力的でした。「私ではダメですか?」と聞いてみると、「あなたは絶対にフリーランスが向いている。自分の名前で仕事をしたほうがいい」って……。
「今年は大草直子でいくからね」と初めて私の名前を立てた大きな特集を組んでくださったり、「グラツィア」で今のキャリアにもつながる「ブログ」を書いたらと言ってくださったのも温井さんでした。こうして、いまの私があるのは、まちがいなくこの方のおかげだと思っています。
そういえば先日、まりこさんに「言葉の人」と言ってくださった理由を伺ってみました。
すると、「大草直子というフィルターを通して語れる言葉を持っている。大草直子自身が、どんなことも自分のこととして捉えて、主観的に語ることができる、メディアみたいなものだから」って。
覚悟を持って言ってくれた言葉には、重みがあるし、彼女たちのひと言は、いまも、お守りのように、背中を押してくれる大切な言葉です。
素晴らしい先輩たちにそうして頂いたように、私も、後輩には思ったことを素直に誠実に伝えていきたいと思っています。
 


出典:大草直子著『飽きる勇気〜好きな2割にフォーカスする生き方』(講談社刊)
取材・文/畑中美香


覚えておきたい!
大草直子の「自分軸で生きる方法」

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