コロナ禍で先行き不透明感が増すなか、これからの時代を担う子どもたちには「他人の意見に依存せずに自分で考えて行動すること=自律」がより求められるようになりました。一方、親世代の多くは詰め込み教育という受動型のメソッドで育っていますので、正直なところ自律と言われてもピンとこない人が多いでしょう。

そのような方にお勧めしたいのが、千代田区立麹町中学校校長時代に画期的な教育改革で注目を集めた工藤勇一さんと、脳神経科学者でさまざまな分野とのコラボを実践している青砥瑞人さんによる共著『最新の脳研究でわかった! 自律する子の育て方』です。本書において、著者のお二人は教育者および科学者という異なる立場から自律する子を育てる方法を考察しています。

ちなみに、本書は子どもの教育に焦点を当てていますが、自律を身に着けたいと願う大人にとってもヒントが満載。アフターコロナの生き方の参考になるかもしれません。気になるその中身をさっそく見ていきましょう。

 


子どもの「脳力」を伸ばしたいなら「安心」を最優先に


子どもの成長には身体の成長と脳の成長があるわけですが、脳の成長は知識を詰め込むことだけではありません。脳を思う存分使いながら、考える力、創造する力、対話をする力、感情をコントロールする力などをさまざまな体験を通して鍛えていく。それが社会に出たときの生きる力の礎になります。

しかし、学校や家庭が子どもにとって緊張感や嫌悪感、不信感に満ちた環境だとすれば、子どもの脳にはストレスがかかりっぱなしで脳を訓練するゆとりがもてません。子どもの脳を自由にすくすく伸ばしていくためには、できるかぎり子どもの脳に不要な負荷をかけず、心理的安全状態に保っておくことが重要です。

 

そのためには学校は2つのことを並行して実現する必要があります。

ひとつはやはり教育の現場を、子どもたちが安心できる環境にしていくことです。キーワードで言えば「失敗しても大丈夫だよ」「失敗こそが学びなんだよ」ということに尽きます。これを単なる標語で終わらせるのではなくて、すべてが許される環境を整えることが重要です。

そうは言っても、いつも安心安全な場所をつくることが可能かというと、そうではありません。社会にでればいろいろなトラブルがあります。そういったトラブルや環境の変化などからくるストレスに強い脳をつくっていくことも、子どもの成長のために必要です。つまり心理的安全状態を自らつくることが得意な脳を育む、ということです。(工藤勇一さん)