肉より魚や豆を多く、塩分は控えめに


食生活を考えるうえで、まず考慮すべきは、「どのぐらいのカロリーを摂るべきなのか」という全体像です。その全体像を知るには、「自分がどのぐらいのカロリーを1日に消費しているか」を知る必要があります。

1日の消費カロリーは、性別や年齢、体重や活動量によっても変わってきますが、下の表が大体の目安になります(参考文献1)

参考文献1を参考に作成

日頃の運動量などにも大きく左右されますので、あくまで目安ですが、大まかにはこれより多く食べれば体重は増えていく、少なく食べれば体重は減っていくということになります。すなわち、だいたいこのカロリーが体重を維持するために必要なカロリーということになります。

 

このカロリーを基準として、まず主要な栄養素に分けて考えていきます。主要な栄養素とはすなわち、炭水化物、タンパク質、脂質です。この中で、炭水化物45~65%、タンパク質10~35%、脂質20~35%程度の配分が推奨されている内訳です。

また、それぞれの栄養素の中でも推奨されていることがあります。例えば、炭水化物では、砂糖の摂取を少なく抑えることは、糖尿病や心血管疾患のリスク低減との関連が知られ、推奨されています。

タンパク質では、赤い肉(牛肉や豚肉)より白い肉(鶏肉)、肉よりも魚や豆などのタンパク源が推奨されています。これは例えば、赤い肉の摂取と死亡リスクとの関連性が過去の研究で指摘されているからです(参考文献2)

脂質についても、加工食品などに多く含まれる飽和脂肪酸より、魚に多く含まれる不飽和脂肪酸を多く摂取することが推奨されています。これも同様に、背景には一定の根拠があり、さまざまな研究で不飽和脂肪酸摂取と心血管疾患リスク低減との関連性が知られているからです(参考文献3)

このような根拠をもとに、肉が好きな人でも、脂の乗った魚を週に1、2回は摂取することが推奨されています(参考文献4)

 

そのほかの栄養素としては、果物や野菜から食物繊維を十分に摂ること、食塩摂取を抑えること、乳製品を(牛乳換算で1日あたり500ml程度)摂ることなども推奨されています。

これらについても、一定の科学的根拠に基づいた推奨になっていて、果物や野菜摂取には、死亡リスク低減との関連(参考文献5)が、減塩には心血管疾患リスクや死亡リスク低減との関連(参考文献6)が、乳製品にもそうしたリスク低減との関連(参考文献7)などが知られています。

「こんなことを考えていたらノイローゼになってしまう」という方もいるかもしれません。しかし、できそうなことから少しずつ変えていけばよいのだと思います。

また、このような推奨を自然と守れてしまうダイエットの手法というのも知られています。DASHダイエットや地中海式ダイエットと呼ばれるものです。詳細の説明はここでは避けますが、前者では大腸がんや心血管疾患リスクの低減との関連性(参考文献8)が、後者ではランダム化比較試験(参考文献9)まで行われ、心血管疾患リスク低減との因果関係が示されています。

こういった背景から、特に高血圧や心臓の病気を抱えた方には、このようなダイエット法が勧められることもあります。

体の健康を守りながら歳を重ねていくうえでは、ここに示したような健康な食生活というのは重要な要素を担うことになると思います。ただし、繰り返しになりますが、「食べる幸せ」という要素は、栄養を考えるうえで忘れてはならない点であり、その点も踏まえて、ご自身にあった、そして体調にあった方法を選ぶべきでしょう。


前回記事「ワクチンの接種状況を管理していますか? 健康を守る予防接種リスト。」はこちら>>


参考文献
1 Dietry Guidlines for Americans 2015-2020. U.S. Department of Health and Human Services and U.S. Department of Agriculture. 2015–2020. Diet Guidel Am 8th Ed 2015. https://health.gov/dietaryguidelines/2015/ (accessed Jan 16, 2022).
2 Wolk A. Potential health hazards of eating red meat. J Intern Med 2017; 281: 106–22.
3 Hu FB, Stampfer MJ, Manson JE, et al. Dietary fat intake and the risk of coronary heart disease in women. N Engl J Med 1997; 337: 1491–9.
4 Eating fish twice a week reduces heart stroke risk | American Heart Association. https://www.heart.org/en/news/2018/05/25/eating-fish-twice-a-week-reduces-heart-stroke-risk (accessed Dec 17, 2021).
5 Miller V, Mente A, Dehghan M, et al. Fruit, vegetable, and legume intake, and cardiovascular disease and deaths in 18 countries (PURE): a prospective cohort study. Lancet (London, England) 2017; 390: 2037–49.
6 Cook NR, Cutler JA, Obarzanek E, et al. Long term effects of dietary sodium reduction on cardiovascular disease outcomes: observational follow-up of the trials of hypertension prevention (TOHP). BMJ 2007; 334: 885–8.
7 Dehghan M, Mente A, Rangarajan S, et al. Association of dairy intake with cardiovascular disease and mortality in 21 countries from five continents (PURE): a prospective cohort study. Lancet (London, England) 2018; 392: 2288–97.
8 Rai SK, Fung TT, Lu N, Keller SF, Curhan GC, Choi HK. The Dietary Approaches to Stop Hypertension (DASH) diet, Western diet, and risk of gout in men: prospective cohort study. BMJ 2017; 357. DOI:10.1136/BMJ.J1794.
9 Estruch R, Ros E, Salas-Salvadó J, et al. Primary Prevention of Cardiovascular Disease with a Mediterranean Diet Supplemented with Extra-Virgin Olive Oil or Nuts. N Engl J Med 2018; 378: e34.

構成/中川明紀
写真/shutterstock

 
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