「再エネか」「原発か」の二者択一論では解決できない


堀:次世代の小型原子炉は、事故が起こりにくく、たとえ起こった時の影響も小さいということです。日本で再エネ100%に近づけるには、太陽光の発電効率が大幅に上がらないといけないし、自然の力でタービンを回す風力と水力も、飛躍的に効率をあげることは難しいんですよね。もちろん核のゴミの問題はまだ未解決なので、その分野の技術開発の必要性を踏まえたうえで、将来の選択肢のひとつとして注目しています。

アツミ:そうなんですね。堀さんは東日本大震災と原発事故きっかけで、今のエネルギー業界に転職されたと聞いていたので、「原子力には絶対反対!」という立場なのかと思っていました。

写真/Boudewijn Huysmans on Unsplash

堀:再エネを巡る議論って「再エネvs原発」とか「新興企業vs既得権益」という二項対立になりがちなんです。でもそうではなく、事故が起きたから「くさいものに蓋」ではなく、どうしたらリスクを小さくできるか、オープンに議論し協力して、新しい技術の創出やイノベーションに振っていくのが大事だと思っています。そういう意味でも、エネルギーの領域にもっと女性が入ってきてほしいとも思うんですよね。多様性はイノベーションが生まれやすい土壌を作りますから。

 


バタ:お話を聞いていると「政治的な力関係の話だから」と任せっぱなしではいられない感じもしますよね。

堀:そうなんですよ。生活に欠かせないエネルギーの話を、他の人に任せっぱなしでいいの? っていう話で。石油とか天然ガスとか石炭といった化石燃料って、人口が多いところにたくさんあるわけじゃないので、ともすると奪い合いになってしまうんです。今回のウクライナ侵攻においても、「ロシアから天然ガスを買うことは戦争への加担することになる」という意見もあり、そういう時に資源がない日本はついモジモジしちゃうんですよ。今回のエネルギー危機をいいきっかけにして、資源の調達先や原発の今後、電力のグリーン化、エネルギーミックスなどしっかり考えて、生活者レベルの議論が進んでいくといいなと思います。


次回は、再生可能エネルギーの種類とそれぞれのメリット、デメリットを伺います。

堀ナナ2021年にTensor Energy株式会社を共同創業。「テクノロジーの力で電力のGXとDXを加速する」をミッションとして、再エネ運用プラットフォームを展開。2022年6月に再エネと蓄電池のファイナンスマネジメントサービスの試験運用を開始。AIとIoTによる再エネ&蓄電池の運用最適化、電力や環境価値のアルゴリズム取引を行うSaaSを開発。映画プロモーターからキャリアチェンジして、 2011年に戦略系コンサルとして再生可能エネルギー業界へ。2016年に再エネファイナンス、再エネ発電事業者としてスピンアウト。事業開発チームをリードし、累計300億円の太陽光発電プロジェクトの組成、開発、建設に従事。持続可能なエネルギーを全ての人に届ける世界を作るための挑戦を続けている。Tensor Energy株式会社


取材・文/渥美志保
構成/川端里恵(編集部)

 


 

 

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