エネルギー問題と切り離せない戦争。そして東日本の大震災


堀:映画も大好きだったんですが、もともと「少しでも世の中を良くしたい」という思いはあったんです。でも渥美さんと出会った当時はミニシアターが厳しい時期で「このままでいいのかな」と悩んでいて、結婚を機に、キャリアを変えるなら今がチャンスかなと。そういう時に、エネルギー分野で働く留学時代の知人が声をかけてくれて。話を聞くうちに、国際政治にもつながる現代のエネルギーの重要性が分かってきたんですよね。

アツミ:まさに今のウクライナ戦争の状況と一致しますね。

​堀:そうなんです。第二次世界大戦もそうですが、戦争ってエネルギーを巡る争いの一面もあるんですよね。で、その話を聞いた10日後に、東日本大震災が起きたんです。福島の原発事故のインパクトは、強烈な後押しになりました。

バタ:すごいタイミングでしたね。

写真/sergei akulich from Pixabay

アツミ:そこからエネルギーに関り始め、2021年ごろに今の会社を立ち上げたわけですね。起業するきっかけはあったんですか?

 


​堀:海外のグローバル企業からコンサルのお仕事をいくつかいただいたんです。例えば「日本国内の事業で使う電力を“再エネ率100%”にするにはどうすればいいのか。そのために投資する用意もある」というような内容ですね。

アツミ:これはビジネスになるなと?

​堀:潮目が変わったなと思いました。実際、アメリカの大手投資会社では、「ESG(環境・社会・ガバナンス)」とか「SDGs」といった部分にきちんと対応していない企業には、投資はしないという動きになっていて、それはすごく大きいです。大企業の意識が、対応しないと将来のリスクになるという風に変わってきているんですね。

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​堀:例えばAmazon社は2025年までに、Google社は2030年までに、自社で使う電力をカーボンフリー、つまり再エネ100%にする目標を立てているんです。製造業を持つアップルは、部品などを作るサプライチェーンにも同じ基準を求めて、2030年までに達成しようとしています。AmazonやGoogleは日本国内にデータセンターをもっていて、相当な電力を使うんですね。そうした電力消費を100%再エネ化するにはどうすればいいか、結構問題になっているんです。

バタ:日本の企業でもそういう流れはあるんですか?

​堀:ありますあります。今、パッと思いつく中では、ソニーの海外事業所はすでに100%再エネ化されていて、国内のカーボンニュートラルの目標を10年前倒しするなどかなり頑張っている印象です。セブン-イレブンも、各店舗の屋根に太陽光パネルを貼り、こぼれた部分は再エネを購入しています。ヒューリックのように自社の太陽光発電所を作った会社もありますね。アップル社がサプライチェーンも含めた100%再エネ化を宣言した影響も大きいと思います。

バタ:あの、ちょっといいですか? AmazonやGoogleが目指す「カーボンフリー」と、パリ協定が掲げる2050年に目指す「カーボンニュートラル」と、どう違うんでしょうか?