「免疫力」という言葉はない?そもそも免疫とは?


編集:生活者としては、風邪予防にはとにかく「免疫力アップだ!」などと思っていましたが、医学の世界にはない言葉だったのですね……。

山田:そうですね。「免疫力」という言葉の問題は、この言葉の定義が定まっていないことなのかもしれません。定義がないので、それぞれの方がイメージする「免疫力」が、異なる意味を持つ可能性があります。私自身は使用を避けている言葉ですし、英語には存在しない言葉です。日本独特で、メディアを中心に広がっている言葉なのではないでしょうか?

 

編集:たしかに……。ただ、免疫そのものや、その仕組みには関心があるので、この機会にきちんと理解したいです。

山田:免疫とは、人間の体をウイルスや細菌などから守る仕組みです。免疫をつかさどる細胞はたくさんありますが、自然に備わっている「自然免疫」と、後天的に獲得する「獲得免疫」の2種類に分類することができます。

編集:「自然免疫」「獲得免疫」という言葉は、聞いたことがあります。

山田:名前を覚える必要はありませんが、「自然免疫」には白血球の一種である好中球(こうちゅうきゅう)やナチュラルキラー細胞が、「獲得免疫」にはB細胞や、キラーT細胞などがプレーヤーとして出てきます。

免疫というのは、こうしたプレーヤー達の、複雑なチームワークによって成り立っています。ウイルスや細菌などの外敵が入ってきたときに、それぞれのプレーヤーが的確に役割を果たし、協力して外敵を倒すのです。街の治安を守る、警察組織のようですね。

そして、この警察組織がしっかりと機能している状態、それが健康にとってよい状態です。そして、この警察組織のチームワークをよくするため、賢くするために行うトレーニングがあります。