閉経前からセルフケアを習慣化し、更年期からは医療の力も頼ってケア


女性ホルモンの低下によりコラーゲンが減少し、肌が薄くなり、乾燥・しわ・たるみなどが出てくるのは顔も膣まわりも同じこと。しかし、顔は熱心にケアをするけれど、フェムゾーンは放ったらかしという人は多いのではないでしょうか?

ファイスケアには余念がなく見た目は若々しいのに、フェムゾーンは驚くほど老化が進行している方が実際に多い、と対馬先生は警鐘を鳴らします。膣まわりのケアも早いうちから習慣化しておけば、閉経後の膣トラブルを防げるのです。

 

<自分でできるフェムゾーンケア>
①洗い方の見直し

フェムゾ-ンを清潔に保つのは基本ですが、石鹸でゴシゴシと洗うのはNG。石鹸を使うと腟を保護している常在菌まで殺してしまう可能性があります。顔や髪にそれぞれ専用の洗剤を使うのと同じように、デリケートゾーンにも専用の洗浄剤を使いましょう。

②保湿
お風呂上がりには、欠かさず保湿。こちらもジェル、クリーム、オイルなど、デリケートゾーン専用アイテムが今は出ています。

③マッサージ
外陰マッサージは閉経前後の女性におすすめです。オイルマッサージで血流を促すと、膣まわりが柔らかく潤い、繰り返すことで柔軟性を取り戻すことができます。ただし粘膜はごしごしこすらずやさしくマッサージをし、オイルはフェムゾーンの専用のものを使ってくださいね。

④エクササイズ
子宮や膀胱などを支えている骨盤底筋を鍛えておくことで、血流が促進し、骨盤内にある卵巣機能を向上させることができます。日常生活をしているだけでは鍛えられない筋肉なので、早いうちから意識的に鍛えておきましょう。

<骨盤底筋エクササイズ>
1. 仰向けに寝て、膝をたてる。尿道と膣をキュッと引き締め、お腹側へギューッと引き上げるイメージで10秒キープ。

2. 次は肛門側をお腹に引き上げるようなイメージで、10秒かけてゆっくり縮めてから脱力

3. 最後は全体を引き上げ10秒間キープし、脱力。

このエクササイズは息を止めずに行いましょう。朝と夜に各10回行うのがオススメです。
 

保湿、マッサージ、エクササイズで、膣の血流改善と筋力アップをすることにより、フェムゾーンの悩みのほとんどは解消が期待できます。早いうちから習慣化しておくことで、閉経後の生活の質も大きく向上させることができます。

もしすでに閉経している方で、不快なおりものが改善されない場合は、医療機関での治療を検討してください。治療のひとつに、炭酸ガスレーザー(フェムタッチ)があります。膣内や外陰部に当てると、レーザーの熱に反応してコラーゲンが増加し、皮膚がふっくらとしてきて、尿漏れや不快なおりもの、ニオイ、膣の乾燥感やイガイガ感の改善につながります。お顔にレーザーを当てるのと原理は同じです。膣まわりもふっくらと若々しく保つことで、さまざまなトラブルを遠ざけることができます。

ほかにもホルモン補充療法、漢方薬、サプリメントなど、不調を改善する選択肢はさまざまあるので、自分に合うものを組み合わせて使用するのがいいでしょう。おりものの異変を感じたら、放っておかずにすぐ受診してくださいね」
 

 

対馬ルリ子
1958年生まれ。対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座院長。産婦人科医、医学博士。専門は周産期学、女性医療(ウィメンズヘルス)。女性の心と体、社会とのかかわりを総合的にとらえ女性の生涯にわたる健康を推進するNPO法人「女性医療ネットワーク」を設立、さまざまな啓発活動や政策提言を行う。『更年期、私のトリセツ』、美容家・吉川千明さんとの共著『「閉経」のホントがわかる本』など著書多数。


取材・文/熊本美加
構成/宮島麻衣
イラスト/shutterstock

 

 

前回記事「女性の更年期のパートナー「かかりつけ医」の選び方【60代以降の生活の質が変わる!】」>>