「自助自立」はとっくに限界を迎えている

 

筆者は、子どもは社会で育てるものだと強く思います。
しかし、自民党の石破茂氏は平成23年8月、党のHPで次のように発信しています。

「民主党が一昨年の総選挙においてマニフェストの中核に据え、政権を担当した後も看板政策として掲げてきた『子ども手当』の撤回は、家庭を基礎とする我が国の自助自立の精神に真っ向から反した『子どもは社会で育てる』との民主党政策の誤りを国民に広く示すこととなり、大きな成果であったと考えます」
――自民党HP 「子ども手当」廃止の合意について

石破氏は「『子どもは社会で育てる』との民主党政策の誤り」と、子どもを社会で育てることを全否定していますが、子育てにおいての「自助自立」って何なのでしょうか。そんなの、みんな言われなくてもとっくにやっていて、そのうえで苦しく成り立たないのです。そもそも子育て支援は国の役割でしょう。10年以上前の発言ですが、政府が前からこういう価値観だから、少子化が止まらなかったんだろうな、と感じます。

子育て世帯への支援が打ち出されるたび、「支援は税金から出ていて、独身が払うのは不公平」「一番損をするのは独身・子なし」なんて声も聞こえてきます。しかし独身と子持ちの対立構造に持っていくのは大きな間違いだと感じます。少子化は社会全体の問題です。

このまま少子化が進めば、社会保障制度を維持できなくなる可能性がありますし、人口が減少すれば、様々なサービスが成り立たなくなります。その影響を受けるのに独身も子持ちも関係ありません。

 

少子化対策・子育て支援は世代と立場を超えて取り組むべき課題


「子育て支援は子育て世帯のため」という捉え方は、あまりに一面的です。

さらに、前提として、子どもを産み育てるには莫大なお金がかかり、先ほど触れたように「子育て罰」と言われるほど、国が支えてくれず、個人に負担がのしかかる社会です。子育て支援はその負担をほんの少しでも軽くする支援であり、決して子育て世帯が得をするわけではありません。

どう考えても、子どもがいないほうが生きていくのにかかるお金は少ないので、「子育て世帯が優遇されている」という認識は誤りだと思います。

一方で、育休・産休を取得したり、時短勤務をする人がいれば、周囲の人の仕事量が増えるのは事実です。しかし、それで子育てをする人を責めたり、不満のほこさきを向けるのは筋違いでしょう。支える周囲の人の待遇改善をする責任は会社側にありますから、責められるべきは会社や社会であるはずです。

少子化はこの日本社会で生きる全ての人の問題である、ということを再度強調したいです。そして、今後の一つひとつの政策に注視していきたいと思います。
 


写真/Shutterstock
文/ヒオカ
構成/金澤英恵

 

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