ホルモン補充療法は、閉経前後の時期に始めないと使えなくなる!


もうひとつ、利用にあたって注意してほしいのは、ホルモン補充療法を始める時期。

 

閉経後、10年近く経ってしまっている場合は、そこからホルモン補充療法を新たにスタートすることはできません。

エストロゲンは、ごくわずかですが血栓ができるリスクがあります。閉経後長い期間(およそ10年以上)が経つと、動脈硬化が形成されてしまっているので、そこにエストロゲンを使うと血管の炎症を起こし、血栓ができやすくなるのです。閉経前後にホルモン補充療法を始めると逆に動脈硬化の形成を予防してくれるメリットが大きいですが、形成されてしまった後ではリスクが増すため投与は推奨されません。なので閉経直後の不調は我慢しないで、そのときに対処することが大切です」

 

また、閉経前だとPMS症状の緩和などの目的でピルを服用している人も多いと思います。ピルとホルモン補充療法はどのように使用していけばいいのでしょうか?

ピルは若い世代(20~30代)で初めている場合、50歳まで使っていいお薬ですが、閉経のタイミング(50歳が目安)でやめないといけません。その理由は、さきほどの説明の通り、エストロゲンには血栓症のリスクがあり、それは年齢とともに高まります。低用量ピルという名前が誤解を生むのですが、その力価(=体内で働く力)はホルモン補充療法より10倍高いのです。そのため原理としては、もしピルをずっと飲み続けることができるのであれば更年期症状は起こらないと期待できますが、血栓症のリスクを考えると切り替える必要があるのです」

メリットとデメリットをしっかりと確認して、始めるなら早めの決断が必要です。