ケース③ 人格否定ともとれるモラハラ発言で上司に「侮辱」をされたら?

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実例:
女性総合職として、地方から東京に転勤してきたSさんの実例を紹介しましょう。
地方で目覚ましい成績を上げ、それが認められて東京本社に転勤になったSさん。ところが、配属先の上司TさんはSさんに開口一番、こうつぶやいたのです。
「女性は結婚や出産もあるし、使えないから来てほしくなかったんだけどな⋯⋯」
Sさんは思わず耳を疑いました。今時、こんな「男尊女卑のモラハラ発言」
を聞かされるとは思ってもみなかったからです。
「おそらくTさんは、モラハラの常習犯に違いない」
Sさんはそう確信すると、Tさんのモラハラを告発するために、準備を始めました。Tさんの発言を録音できるようにつねにICレコーダーを携帯し、人事部に告発するルートも確認しました。
そんなある日、事件が起こりました。
プロジェクト終了の慰労会で、TさんがSさんに向かって、「正直、期待はずれだったな~」「よくうちの会社に入れたね~、うちの人事も見る目がないなあ」と、明らかにSさんを貶める発言をしてきたのです。

 


言葉の護身術:数秒、間をあけて「カウンターパンチ」


Tさんの発言は、完全に人格を否定する「モラハラ発言」です。
相手が上司であり、お酒が入ったうえでの発言だったとしても、とうてい許せるものではありません。
ここは忖度も遠慮も必要ありません。毅然と言い返すことが必要な場面です。
実際、SさんもTさんに痛烈な「言葉のカウンターパンチ」をお見舞いしました。
「正直、期待はずれだったな~」「よくうちの会社に入れたね~、うちの人事も見る目がないなあ」というTさんの発言に対し、
「......期待はずれって、それ、どういうことですか? 期待するのはそちらの勝手ですよね。文句は人事に言ってください」
「......よくうちの会社に入れたねって、どういう意味ですか? Tさんに人事権あるんですか? もしかして人事部批判ですか?」と数秒おいてから、低い声で、そう言い返したのです。

そして、とどめに、
「私を侮辱するのはやめてください。謝っていただけますか?」
と毅然と言ったといいます。

Tさんは、Sさんの言葉が心底恐ろしかったようで、それ以来、人が変わったように、Sさんに対して丁寧な態度を取るようになったそうです。

「言葉のカウンターパンチ」は、やみくもに言い返せばいいのではなく、そこには効果を最大限に高めるコツがあります。

それは、「数秒おいてから、低い声でオウム返しをする」ということ。

人格を否定するようなひどい言葉をとらえて、
「(期待はずれって)それ、どういうことですか?
「(よくうちの会社に入れたねって)どういう意味ですか?」と、相手を問い詰めていくのです。

相手の発言にすぐ言い返すのではなく、少しだけ間をおき、じっくりと相手を問い詰める――。そうすることで、迫力が増し、言葉の威力が何倍にも高まるのです。