「まるで国際社会に反抗しているように見える」

 

定期的に行われる条約の実施状況の審査において、日本の審査に当たった委員の言葉が紹介されています。

「日本はこれまで何度も同じ勧告を受けてきて、まったく改善しようとしない。まるで国際社会に反抗しているように見える」(『武器としての国際人権 日本の貧困・報道・差別』P42より)
 


さらに、条約で認められた権利を侵害されたと主張する個人が、各条約の委員会に直接訴えを起こして救済を図る制度である「個人通報制度」が日本では使えず、なんとこの制度が使えないのは先進国の中で日本だけだというのです。「政府から独立し独自の調査権限を有する実効的な国内人権救済機関」である国内人権機関も現状日本には存在せず、何度も設立を勧告されているといいます。

国連の公式調査訪問が決まったにも関わらず、日本政府がドタキャンしたこともあったそうです。その事実を知った、特別報告者を務めたことのある教授の「日程まで決まっていてキャンセルするのは独裁国家くらいだ」という言葉はなかなか衝撃的です。

 


報道されない、国際人権の実情


他にも、特別報告者の調査をサポートした人たちが、日本に滞在中政府から監視されたり、国連人権勧告が行われると激怒して抗議したりといった、驚愕の実態が次々に明らかになります。具体的な事例としては、安部政権下で強行採決された「特定秘密保護法」が検討された際、情報や表現の自由の観点から、国際人権基準から大きく逸脱している、と何度も懸念の声が集まり勧告がされたそうですが、政府は耳を傾けませんでした。

藤田さんは、日本の国際人権に関する実情をマスコミが正しく報道しないことにも危機感を示しています。日本国内にいると自分の国がどんな状況なのかあまりわかりませんが、本書を読むと、国際的な基準で政府が人権問題にきちんと取り組んでいるのか、一考する必要があるのではと切実に感じるのです。