陰部を「デリケートゾーン」と呼ぶのはもうやめましょう


では、GSMにならないためにどのようなフェムゾーンケアを行えばいいのでしょうか?

 


「まずは保湿。腟も顔と同じで、潤いが大切です。乾燥が進むと、痛みや痒みがでて、外部刺激があれば荒れて炎症を起こしやすくなります。ボディ用の保湿剤でいいので、外陰部の表面にしっかり塗りましょう。

フェムゾーンはデリケートゾーンとも呼ばれていますが、個人的にはその呼称はあまりよくないと考えています。デリケートだからあまり触らないほうがいいと思ってしまいませんか? でも実際は、外にさらされている顔の次に皮膚が強いのが外陰部です。そうでなければ尿・便・精液などの刺激に耐えられませんよね?

なので、ボディに使って問題のない保湿剤であれば塗って大丈夫。小陰唇や腟前庭部などの皮膚と粘膜の移行部分も全身用保湿剤を塗ってかまいません。ただしGSMになると粘膜が弱くなってくる人も多いので、ヒリヒリするような場合は、フェムゾーン用のオイルなどを使用してください。

 


次に骨盤底トレーニングです。自分でしっかりキュッと腟を引き上げる力を保ち続けること。骨盤底を鍛えるとフェムゾーンの血行がよくなり、GSMの症状の改善に効果があります。

ほかにはダイレーターやバイブレーターをつかった腟トレーニングもありますし、定期的なセックスがなくてもセルフプレジャーを取り入れるのもいいと思います。ご自身に合った方法で試してみてください」

 

すでにGSMの症状に悩んでいる場合は、すぐに婦人科や女性泌尿器科・女性外来等を受診しましょう。

「GSMの治療としては、フェムゾーンのケアが重要です。

そこで、女性ホルモンや男性ホルモンの局所投与(塗り薬や腟座薬)や、理学療法士や看護師などによる骨盤底トレーニング指導などを行い、さらにフラクショナル炭酸ガスレーザーやエルビウムヤグレーザーなどのレーザー治療も行います。

全身のホットフラッシュやイライラ、不安、全身倦怠感などがある場合は、全身の張り薬や塗り薬、飲み薬等の女性ホルモンや男性ホルモン補充も行います。ホルモン補充以外には、イソフラボンのサプリ、プラセンタ注射、漢方、アロマなどを使用しています。女性ホルモン分泌を高めることで膣内の血流を良くする方法です。

GSMは女性ホルモンの減少により起こるものなので、女性ホルモン補充を行えば9割改善します

保湿、骨盤底トレーニングの基本ケアを習慣にし、不調があればきちんと治療を受ける。要はフェムゾーンを「もう使わない部位」とお蔵入りさせないことが閉経後の生活の質を上げるために大切なのです。

 

関口 由紀(Yuki Sekiguchi) 
女性医療クリニック・LUNAグループ」理事長。人生100歳時代の日本の中高年女性の生涯にわたるヘルスケアを実践する第一人者。女性医療のスペシャリストであり、女性泌尿器科分野の専門医として、特にミドルエイジ以降の女性のフェムゾーンの悩み、セックスの悩みに寄り添う。2022年5月には、女性の性や身体に関するオンラインプラットフォーム「Femzonelab フェムゾーンラボ」をスタート。著書に『セックスにさよならは言わないで:悩みをなくす膣ケアの手引』(径書房)『性ホルモンで乗り越える男と女の更年期 知っておきたい驚異のテストステロンパワー』(産業編集センター)など。


取材・文/熊本美加
構成/宮島麻衣
イラスト/shutterstock

 

 

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