生理がなくなることも不安でしたが、いざなくなってみると、そのことをすっかり忘れ、たまに誰かが生理の話をしているのを聞いて「そういえば、もう生理ないんだった」と思い出すくらい。生理や排卵がなくなったぶん、ホルモンバランスによる身体の不調がなくなり、正直ラクになったというのが本音です。

また、女性ホルモンの大半が作られるという卵巣を取ることで、エストロゲンが分泌されなくなってしまうことも大きな不安の一つでした。

エストロゲンの役割を調べると、女性らしさを作るホルモンだとか、肌や髪を美しくする作用がある、などと出てきます。ですから卵巣がなくなってしまったら、見た目の女性らしさにも変化が起こってしまうのでは……? と心配になったのです。

担当医に相談すると、卵巣を取ったからといっていきなり見た目が老けてしまうことはないけれど、閉経前に卵巣摘出をすると骨粗鬆症になるリスクが高まると言われました。そこで、退院後少ししてから、ホルモン補充療法をスタートすることになりました。といっても、私の場合は、ジェル状の薬を毎日太ももに塗るだけの簡単なものです。(※)

ホルモン補充療法が関係しているかはわかりませんが、私が恐れていた肌の劣化などは今のところ感じません。むしろ、がんになってから健康的な生活を心がけるようになったので、肌の調子が以前よりもずっと良くなりました。

 

手術前の私がそうだったように、子宮や卵巣の全摘をすることになり、不安やショックに襲われる人は多いでしょう。でも、同じ手術を受けた他のがんサバイバーの人たちに話を聞いても、「取る前は不安で仕方なかったけれど、意外と大丈夫だった」という声が多いです。

(もちろん、子どもを産みたいのであれば話は変わってきます。子宮を温存するためには、やはり早期で発見することが重要だと思います。)

※一般に50歳前後になると徐々に卵巣の機能が低下し、閉経に至ります。しかし、それより早い年齢に手術により両側の卵巣を摘出する事で卵巣機能が失われ、閉経することを外科的閉経と言います。卵巣から分泌されるエストロゲンという女性ホルモンの作用は多岐に渡るため、手術により急激にエストロゲンの分泌が低下することで全身に様々な影響を及ぼします。これを卵巣欠落症状と言います。

卵巣欠落症状には、一般的な更年期症状と同様ののぼせ、ホットフラッシュ、発汗、冷え、動悸、肩こり、頭痛、イライラ、不安、不眠、倦怠感などが含まれます。また骨粗鬆症も、自覚症状はなくても老年期の骨折の原因となり寿命に影響するため、エストロゲン欠乏により生じる重要な病態です。これらのエストロゲン欠乏による症状の改善のために、不足している女性ホルモンを補うホルモン補充療法が必要に応じ行われます。ホルモン補充療法では、内服治療の他に、皮膚に貼るシールや塗るジェルによる経皮投与が使用されます。

 

何よりものダメージは、リンパ節の摘出だった……


同時に、がんサバイバーの人たちの多くが口にするのが「子宮や卵巣よりも、リンパ節を取ったことの方がダメージだった」ということ。

広汎子宮全摘術の際には、骨盤内のリンパ節も一緒に切除する「リンパ節郭清」も行います。この手術を経験した人たちのほぼ全員が恐れているのが、「リンパ浮腫」という合併症です。

手術前の説明で、「リンパ節を摘出した影響により、数ヶ月から数年後、下半身に浮腫が生じるリスクがある」と言われた時に、「リンパ浮腫(※)」と検索して出てきた画像を見て驚きました。悪化すると、足が何倍にも膨れあがり、皮膚が象のように硬くなってしまうこともあるからです。

ちなみに、摘出するリンパ節の数は人によって異なるようですが、私の場合は、44個のリンパ節を取っています。

術後数ヶ月してから、歩き過ぎた日の翌日や、疲れている時に、下腹部や足の付け根に軽度の浮腫が生じるようになりました。今まで履いていた下着やデニムが履けなくなってしまったり、血行が悪いせいか全身が一日中ダルいと感じる日も多く、リンパの重要性を痛感しています。

 

同じ手術をした友人は、術後2年経ってから、見た目にもわかるレベルで、浮腫が始まったと言っていました。リンパ浮腫外来や専門のマッサージをしてくれる機関もあるので、私も友人も、月に一度のマッサージに通っています。

冒頭で、「今はすっかり普通の生活に戻った」とは書きましたが、一度がんになった以上は、やっぱり完全に前と同じ生活はできないのかもしれません。それでもこの状況と向き合いながら、これからは健康に生きることを一番の目標にして、自分とうまく付き合っていければいいなと思っています。

※子宮頸がんに対して行われる広汎子宮全摘術や準広汎子宮全摘術では、子宮周囲の骨盤内にあるリンパ節も摘出します。中でも足の付け根(鼠径部)付近のリンパ節を多く摘出すると、足からのリンパ液の流れが悪くなり、足側に鬱滞するため下半身に浮腫を生じ、これをリンパ浮腫と言います。リンパ浮腫の症状は個人差が大きく、短期間で改善する場合もあれば長期間に及ぶ事も。対策として、下肢の挙上、弾性ストッキング、リハビリテーション、手術などが行われます。近年では、浮腫を起こさないよう配慮した手術が行われるようになってきています。
 

がん治療を終えて3ヶ月経った今…体に起こった変化とは?
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イラスト・文/小澤サチエ
医師監修/東京慈恵会医科大学 産婦人科学講座 柳田聡
構成/山本理沙

 

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