慢性疲労や原因不明の疼痛も引き起こす


白川:あとは慢性疲労症候群もそうです。体がアクセルを全開にして、同時にサイドブレーキも引いている状態だと、当然疲労してしまいますよね。他にも感情も含めたエネルギー的な滞りが体に起きてしまって、その部分が痛くなっちゃうということもあります。原因不明の疼痛などがそうです。危機的状況に対応するためのモードが続くことで、体のバランスが崩れます。ストレスがかかったら、不安にかられたりパニックになったり、びっくりしやすかったり、眠れないとか、リラックスできないとか落ち着きなくなったりとか、感情的になったり、それが長引くことで身体的な病気に繋がっていきます。子どもの頃の緊張、覚醒の状態からそういう症状が来ているんです。通常はすぐにでも自分で落ち着けるんですけど、一度緊張すると落ち着こうとしてもがーって覚醒してしまうんです。そこから抜け出せなくなってしまう。

 

ネガティブな体験を人間関係に投影してしまう


③ 世界の見え方、人間関係が変わる

白川:そしてトラウマによる三重苦の最後が、世界の見え方や人との関係性も変わってしまうということです。人間が記憶を持つのは4歳くらいだと言われています。言葉が使えるようになってから、ああしてーこうしてーこうなったという、時系列を持った物語記憶ができるようになるのが大体4歳なんです。4歳までは、時系列という物差しがない感情的な記憶や身体感覚、自律神経系の反応を身体が無意識に覚えているんです。0から4歳までの間に守ってもらえなかったとか、愛されなかった、私は大切にされないとか、私は生きていてはいけないとか、そういうネガティブな感覚っていうのは身体感覚として右脳に残っているといわれています。そして私達は、その感覚を映写機のように現実に投影します。

 

白川:ネガティブな体験をいろんな人間関係に投影してしまうんです。ネガティブな感情のフィルターがかかって、世界が汚染されてしまう。トラウマは世界の見え方も変えてしまうんです。例えば約束の時間に相手が少し遅れてきたとしたら、もう自分が大切にされていない理由になってしまうんです。加害被害の意味付けをしやすくなってしまう。例えば、相手が遅れて「ごめんね遅れて、急いだけど電車が遅れちゃった」と言われた時に「嘘だ!言い訳して!」と捉えてしまったら、対人関係ってうまくいかないですよね。でも本人は意地悪でそう思うのではなくて、本当に大切にされてないと感じているし、そう感じることが本当に苦しいからそう思ってしまうんです。その背景には、覚えていないような時期の解消されない怒りが深いところにあるんです。