自分のショックと向き合うため、オタ活仲間に会いに行く旅に出た


中学時代から大ファンだった「推し=歌手チョン・ジュニョン」に顔を覚えられていたオ・セヨン監督。ファンとしてテレビ出演を果たした「成功したオタク」として、ファンの間ではちょっと知られた存在でした。「バーニング・サン事件」で発覚したのは、その「推し」が集団レイプに関わり、さらにそれを撮影した映像をSNSのチャットルームで数人の芸能人と共有していたこと。性犯罪者として懲役5年の判決を受け、「推し」は芸能界を引退することになりました。

オ・セヨン監督:事件のすべてが衝撃的でしたが、私自身にとって何が一番ショックだったか……そうですね。事件でチャットルームの多くの会話内容が公開されていたんですが、一般に向けた記者会見をやった日のものがあったんですよ。そこに”申し訳無さそうなフリをしてくる”と書いていたんです。一番ショックを受けたのはその発言でしたね。ファンに対する気持ちまで嘘だったのか、と。

自分と同じ状況を経験している友人たちは、この期間をどうすごしているのか。どうやって乗り越えたのか――それが気になったセヨンさんは、かつてオタ活をともにした仲間たちを訪ね歩くことに。実際に会ってみると、誰もが同じように混乱し、同じように傷ついていて、話し合うことはある種のセラピーのように、お互いを慰める効果があったといいます。

 

オ・セヨン監督:インタビューは1人あたり2~3時間おこないました。「その当時の気分はどうだったの? こんな時はどうだった? あんな時はどうだった?」という非常に具体的なことを聞きました。映画で取り上げた内容には様々なものがありますが、全て私自身が共感したものです。でも全員に共通しているものは、“「推し」だけを憎むようになるのではなく、その人を好きだった自分自身も憎むようになっている、自己嫌悪に陥る”というものでした。もしかしたらファンでない人には理解できない感覚かもしれません。