留女ちゃんと古奈禰ちゃんが、このシェルターで古株になってしまったのは、彼女たちがシャーシャー・シニア猫という理由だけではありません。シェルターで保護できる猫には限りがあります。私としては、彼女たちの隠れた魅力を知っているし、それをうまくSNSなどで伝えられたらいいのですが、年齢が若くて人懐っこい猫の方が、里親が見つかりやすいということもあり、そうした猫たちの里親探しを優先してしまうからです。

気持ちよさそうな顔で寝ている古奈禰

猫の性格はそれぞれですし、今までいた生育環境に影響されているわけで、人に懐かない猫がいるのは当たり前です。猫は人間がかわいがり、癒やされるために存在しているのではありません。人間には懐かない、シャーシャー猫をわざわざ受け入れようという人は少数派かもしれませんが、そういう部分も含めて彼女たちを受け入れてくれる、猫に対して使命感のある里親さんが名乗り出てくれるのを待っています。
 

 


「すあま商會」を卒業した猫たちの中にも、彼女たちのようなシャーシャー・シニア猫はいました。でも、ここでそんな猫たちを直接見たり、SNSを通じたりして、「私が最期まで一緒に過ごしたい」というファンになってくれた人たちの元に巣立っていったのです。

「すあま商會」のシェルターで暮らしながら、里親さんを待つ留女(写真左)と古奈禰。古奈禰はまだ1回もトライアルに行ったことがない

シニア猫は近い将来に病気になり、介護が必要になるかもしれないと敬遠されがちです。でも、子猫だって時が過ぎれば、いずれそういう状況に直面します。逆に、子猫は実は病気が隠れていても、気づけないことが多いため、子猫だから安心ということはありません。

一方のシニア猫はどんな性格か把握しやすいですし、有り余るパワーで部屋を走り回ることもあまりないため、飼いやすいのも大きな魅力。人間でも、お年寄りの方が近くにいたら、無条件に手を差し伸べることはありますよね。シニア猫も同じで、親切心や慈しみの心を持って接してみてほしいのです。

何より猫の場合、歳を取っていても見た目はかわいいまま! シャーシャーいったり、睨みを効かせたりしてきても、そこは猫なので、その姿すらもかわいいと思えます。これは人間にはない、猫という生き物の特権です。

じっとこちらを見つめる留女

私は猫が好き、猫に囲まれていたいから保護活動を続け、「すあま商會」の運営をしているわけではありません。自分のライターとしての働きもすべて費やしていて、むしろ大変。それでも続けているのは、猫に対して人間の責任を果たしたいという使命感があるからです。私一人にできることは限られていますが、社会貢献の一つだと思っています。ただし、年齢的にいつまでも続けられるものではないので、あと5〜6年を目処に区切りをつけるつもりです。

それまでに「すあま商會」を引き継いでくれる人が現れたらいいのですが、ここまで持ち出しが多くてビジネスとして成立するにはまだまだなので、少々厳しいかもしれません……。このシェルターにいる猫たちもみんな卒業できるといいのですが、できなかった子は私が家で面倒を見ることになるでしょう。留女ちゃんと古奈禰ちゃんは、そうなる前に1日でも早く、いい里親さんとのご縁に恵まれ、余生を過ごしてほしいと願っています。
 


文・編集/吉川明子
 

 

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