佐野洋子さんは「猫かぶり」な人


――佐野さんは、どんな方でしたか?

山本さん:「猫かぶり」な人です。ふだんは反応がとっても早いのに、ときどき、くっと猫をかぶることがあるんです。興味がなくなったり、そばに目上の人がいたりするとおとなしくして猫をかぶっちゃう。でも、猫をかぶっているくせに、相手に一撃を加えることもあって。そういう緩急もありましたね。

大きな目でよく人を見ていて、人に対して機嫌が悪くなるなどということもなく、あたたかくていい人でした。そのときどきのご自分にほんとうに素直で、「お金があるなら、使わなかったらもったいないじゃない」とか、佐野さんならではの考え方がおありで、面白かったですね。

――なぜ、佐野さんは銅版画に取り組もうと思われたのでしょう?

山本さん:佐野さんは、おもしろい画材があればどんどん試して描くし、途中から色が変わってきても、それもおもしろいと考える人。フランクに、そのとき出合った画材に触発されて描くこともあったようなんです。「新しい画材に出合ったら、イメージが広がるのでうれしい」と。

銅版画も同じで、いろいろな画材のなかに銅版画がある、と思われたのかもしれませんね。

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山本容子さんインタビュー(後編)は5月1日(水)に公開予定です。お楽しみに!
 

 



山本容子 やまもと・ようこ
'52年埼玉県生まれ。’78年京都市立芸術大学西洋画専攻科修了。都会的で洒脱な線描と色彩で、独自の版画の世界を確立。本の装丁、挿画からパブリック・アートまで幅広く手がける。近年は絵画に音楽や詩を融合させ、ジャンルを超えたコラボレーションも。2024年もさまざまなプロジェクトが進行予定。​

●聞き手
高木香織 たかぎ・かおり

出版社勤務を経て編集・文筆業。皇室や王室の本を多く手掛ける。書籍の編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『美智子さまから眞子さま佳子さまへ プリンセスの育て方』(ともにこう書房)、『美智子さまに学ぶエレガンス』(学研プラス)、『美智子さま あの日あのとき』、カレンダー『永遠に伝えたい美智子さまのお心』『ローマ法王の言葉』(すべて講談社)、『美智子さま いのちの旅―未来へー』(講談社ビーシー/講談社)など。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(共著/リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)。


撮影/荒木大甫(山本さん)
取材・文/高木香織