学校の階段を昇ると、廊下には生徒たちの学習発表の資料が張り出されていました。娘はあこがれの気持ちを抱いて、目を輝かせながら教室に整然と並んだ机を眺めていました。
そんな娘の横顔を見て、娘も「自ら学びたい」という成長段階に育ったという手応えを感じました。教室にとどまって、授業に臨む準備ができたように思ったのです。
実は、いまでも忘れられない娘の姿があります。
娘が小学1年の頃は、とてもランドセルを背負うどころではなく、教室にとどまることすらできませんでした。気づくと荷物をおもむろに捨ててしまうので、胸のあたりでバチッと留める金具のついた子ども用のリュックを背負っていました。
それでも、2歳年下の妹が地元の公立小学校に入学し、ランドセルを背負うと、うらやましそうに見ていたので、一度だけ自宅で妹のランドセルを姉に背負わせてみたことがありました。
娘は一瞬背負って、すぐに下ろしてしまいました。
娘がランドセルを背負ったのはそれっきりです。でも、私のまぶたの奥にはラベンダー色のランドセルを背負った娘の姿がいまでも焼き付いています。
無理だと分かっていても、私が一目見てみたかったのだと思います。
—— 素敵な思い出ですね。
育ちがゆっくりの娘でしたが、中学生を前に、いよいよ学校らしい校舎に憧れを持ち、本人なりに学習意欲も生まれていました。
運動会の様子を見て、無理強いさせることはなく、一人ひとりの特性を尊重して、きめ細やかに寄り添ってくださる学校に娘をぜひ通わせてやりたいと思い、卒業後は旭出学園に進学のご縁をいただきました。
しかし小学校卒業が近づいてきたある日、母子ともに交通事故に巻き込まれて救急車で搬送されたのです。
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