1995年から25年間続いた人気連載『ハッピー!』を知っていますか? ラブラドール・レトリバーの仔犬ハッピーが、盲導犬になるための厳しい訓練を乗り越えて、22歳の時にスキー事故で目が見えなくなった香織の人生を変えていくストーリーです。2010年には『ハッピー!ハッピー♪』として続編がスタート、2021年1月号(2020年12月1日発売)の「BE-LOVE」で最終回を迎え、コミックス最終巻15巻が1月13日に発売されました。1999〜2000年には高岡早紀さん主演でドラマ化もされ、コミックス累計部数は400万部を突破。盲導犬と主人公の愛と絆に涙なくしては読めない名作です。

『ハッピー!ハッピー♪』(1) (BE・LOVEコミックス) (Kissコミックス)

『ハッピー!』は、スキー事故で失明した香織と盲導犬ハッピーの物語でしたが、続編の『ハッピー! ハッピー♪』は、香織とハッピーの関係性に憧れて、盲導犬を迎え入れることを決めた18歳の桜子が、訓練センターに入所するところから始まります。

病気で全盲となり、4歳で両親が離婚してしまった桜子。その後、大事に育ててくれた祖父母が相次いで他界してしまいます。ある日、駅ホームで転落してしまい、その恐怖から白杖(はくじょう)では電車に乗れなくなり、盲導犬の貸与を申請します。

 

盲導犬は、目の見えない人や見えにくい人が行きたい時に行きたい場所へ出かけられるように、障害物を避けたり、段差や角を教えたり、安全に歩くため手伝いをするのが仕事です。希望者は日本盲導犬協会に申請し、調整ができたら訓練センターで約4週間の共同訓練が始まります。ここで安全な歩行の基本を学び、犬の世話をし、お互いの理解を深めていきます。桜子はまさに、スタートラインに立ったばかりです。

いよいよ、桜子とパートナーとなるアポロとの対面。全盲の桜子は、手でアポロの感触や大きさを確かめます。ハーネスをつけたアポロと一緒に歩く訓練を続けますが、桜子には気がかりなことがあります。それは、アポロが自分のことを好きじゃないかも、ということ。心が通じ合っている実感を得られずにいるのです。

 

ある日、アポロは歩行訓練で歩道から車道に踏み出す時に、本来であれば立ち止まって桜子に知らせるべきところを、そのまま渡ってしまいました。訓練士に「アポロが失敗した理由を自分で考えなさい」と言われたものの、アポロに嫌われているかもという不安にとらわれてしまっている桜子には、どうしてなのか検討もつきません。実はアポロは喉が乾いてしまい、早く水がほしくてミスをしていたことが明らかになります。その時、訓練士は桜子に、「様々な状況を判断して歩くのは犬ではなく人のほうなの! 訓練された盲導犬もミスゼロのスーパードッグではないの…!」と教えます。

 

桜子は、自分の判断ミスでアポロを死なせる可能性もあることに気づき、ますます不安に陥り、大声で泣いてしまいます。そんな桜子に寄り添うアポロ。この出来事を契機に、お互いがお互いを察してスムーズに歩けるようになっていきます。

 

『ハッピー!』の主人公・香織もこのあと登場。ハッピーがリタイアした後、ハッピーへの思い入れが強いあまりに、新たな盲導犬を申請できずにいた香織が、桜子とアポロを見て、次の盲導犬を受け入れる決意をします。

街中で時々、盲導犬と歩く人を見かけることはありますが、盲導犬がどのように訓練されているか、視覚障害者がどのように日々暮らし、どんな気持ちを抱えているのかということなどを知る機会はそうありません。でも、『ハッピー』や『ハッピー!ハッピー♪』を読むことで、盲導犬や視覚障害者、盲導犬の育成に関わる人たちのことを知ることができます。盲導犬さえいれば、犬が先導してくれるのでどこにでも行けるような気がしますが、人間が位置関係を把握し、盲導犬に指示を出さなければ始まりません。その指示に合わせて角や段差、障害物を教えることで、視覚障害者ははじめて目的地に行けるのです。ということを、私はこの作品で改めて気付かされました(恥ずかしながら。確かに犬が勝手に連れていってくれるわけではない!)。

主人公の香織はスキー事故で、桜子は病気で全盲になったように、視覚障害は先天的なものだけでなく、誰にでも起こりうることです。そう思うと、香織や桜子などの苦しみ悩み、盲導犬との出会いによって行動範囲が広がり、前向きに生きる希望が持てるようになる過程などがよりリアルに感じられるはずです。25年に渡って綴られてきた、盲導犬と人が織りなす、愛と感動の物語。深く心に染み入ります。

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『ハッピー!ハッピー♪』
波間信子 講談社

22歳のときに事故で失明した香織は、盲導犬のハッピーや、親友、家族に囲まれて、力強く生きてきた。時は経ち、ハッピーは盲導犬を引退、2頭目の盲導犬のティンクルを迎えることに。最初は“2頭目”ということでの難しさもあったが、次第に前向きに歩み出す香織や家族、そしてハッピーとティンクル。長男・明光も小学生となりますます目が離せない、大人気感動ストーリー!