「キャリア」「成功」と聞くとどんなことを思い浮かべますか? 会社員もしくは公務員のように組織に属している人なら、おそらく昇進や昇給といった組織内での“上昇”をまっさきにイメージするのではないでしょうか。しかし、コロナ禍で価値観やライフスタイルが大きく変化しつつある現在、このようなキャリア観は過去のものになりつつあります。

そんななかで新時代にフィットするキャリア観を提示し、人生をより楽しむためのヒントを提供してくれるのが、人事コンサルタントとして活躍する村山昇さんの著書『キャリア・ウェルネス 「成功者を目指す」から「健やかに働き続ける」への転換』です。本書では人生100年時代を念頭に置き、仕事で息切れすることなく長い人生をまっとうするためのさまざまなヒントが提示されています。

今回は、キャリアの壁にぶつかることの多い40代会社員に向けて書かれた部分を中心に抜粋してご紹介します。

 

人生100年時代にフィットする新しいキャリア観


キャリアという概念が次第にエリート・ビジネスパーソンだけの概念でなくなり、広く職業を持つ人びとに普及してきました。それに伴って、その言葉が含む意味合いや見方も広がっていきます。

大きくはまず、「成功のキャリア観」の反動として「自己防衛のキャリア観」というものが生じてきました。その背景として、少なからずの人たち、特にミレニアル世代と言われる若い世代が、会社組織の中で紋切り型の成功を目指すことに違和や疲れを感じ、自分を痛める仕事生活というものから離れようとしたのです。さらには一部で、労働者を粗悪な条件で働かせるいわゆるブラック企業的な雇用主が増えたことで、きつい労働から自分を守る意識はますます高まりました。

 

会社に滅私奉公することが普通だった昭和世代と異なり、平成・令和世代のキャリア観はプライベート生活優先に振れています。これはある部分、健全な寄り戻しとみることができます。しかし、このキャリア観によって、働くことは忌み嫌うべき作業であり、心地よい私的快楽に引きこもるような生活をよしとするのなら、それはまた一つの悪い極の姿にみえます。

 

誰しも100歳まで生きてしまうかもしれない時代において、「成功のキャリア観」も「自己防衛のキャリア観」もどこか不健全さが残ります。そこでいま、第三の構え方として「健やかさのキャリア観」ともいうべきものが求められています。


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いま求められている「健やかさのキャリア観」
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