2015年に都内から鎌倉に拠点を移し、海の近くの戸建てで夫と6歳になる娘さんと暮らす狩野真実さん。大手アパレルや外資系商社で新ブランドの立ち上げやリブランディングに携わり、その後夫婦でメディアの企画・編集やイベントの企画などを行う会社を立ち上げた彼女は、鎌倉での生活を満喫していました。ところがある日、夫が放ったひと言を機に、箱根にも拠点を持つことに。平日は鎌倉、週末は箱根で過ごす日々が始まりました。

 

「新たな視点を持ちたい」ある日夫はそう言った


「夫は編集者をしていることもあって、いかにいろいろな視点を持つかということにこだわる人で。“そろそろ東京を離れて、東京視点じゃないモノの見方をしたい”という言葉をきっかけに、鎌倉に越してきました。私も東京は好きでしたが、当時は好きなだけ仕事をして好きなだけ遊ぶという生活をしていて、東京でこれ以上の楽しみって意外とないかもしれないと思ったんですよね。夜中まで仕事をして朝まで呑むという生活のテッペンがない気がして、もういいかなと。30代半ばぐらいです。何も考えずに鎌倉に来ました」

鎌倉は人と人との距離感が近く、イベントやプロジェクトを立ち上げるにしても東京のように気負わず始められる環境だと言います。そのゆるさが気に入り、夫婦は鎌倉での暮らしにどっぷりハマっていきました。それから5年。またしても夫が新たな生活を提案します。

「鎌倉の生活は快適で楽しいけれど、それとはまた違う二拠点の視点があるとモノの見方が変わりそうだよねって言われて。まぁそうかもねという軽い感じで第二の拠点を探し始めました」

鎌倉に居心地の良さを感じ、帰る場所としては最高だと思っていた夫妻は、新たな地への移住は一切考えず、“鎌倉から近くて鎌倉にはないモノ”を求めて第二の拠点探しをスタート。鎌倉にないのは“深い森と温泉”ということで、すぐに箱根案が出てきました。

 


観光地に拠点を構えれば人も来てくれる


「結局私たちは、住む場所はミーハーで分かりやすいところがいいんですよね(笑)。私は自宅に人を呼んでワイワイやるのが好きなタイプで、そうなると観光地の方がみんな来やすいじゃないですか。鎌倉でそれを実感していたので、箱根という選択肢は自然と出てきました。そこから週末のたびに箱根に通ってエリアリサーチをして、最終的には仙石原と宮ノ下の間の別荘地に決めたんです」

当初は湖のある生活に憧れ、芦ノ湖付近で探したという夫妻。しかし物件数が限られていたため断念し、今度は商店が多くて住みやすそうな仙石原エリアに的を絞りました。ところが2020年の夏に参加した2週間のお試し移住で、仙石原は少し違うかもと思ったのだそう。

「仙石原は山の上なので夏でも肌寒く、ちょうど天気が悪かったこともあって気が滅入ってしまったんです。でも滞在期間中、町役場の方に紹介いただいた家が別荘地にあって、その環境が良かったので意外と別荘もありかなと」

湖畔で過ごす静かな夕暮れ。


お試し移住で箱根のコミュニティを知ることに


箱根は少し特殊な環境で、コロナ前は年間2,000万人もの人が訪れる一大観光地にも関わらず、町民はわずか1万人強。その上、集落が点々としていて山を越えなくては行き来できないため、狩野さんいわく「地域のコミュニティが見えづらい」のだそう。

「鎌倉であれば、何度か通って飲食店の人と仲良くなればその土地の空気感は何となく分かりますが、箱根はそれがなくて。観光業の人も意外と箱根には住まずに小田原から来ていたり、地域の人とのつながりを築きづらい。なので町のお試し移住に参加すれば、箱根の人たちとつながれるかなと思って参加しました。例年は2〜3倍ほどの倍率が、コロナ禍で10倍にもなっていたようですが……」

コロナ禍で参加した2週間のお試し移住。
 
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