老化とともに起こる病気の中には有効な予防法が確立した、予防できるものがあります。

こうした病気の予防を考える医療は「予防医療」とも呼ばれ、近年よく注目されるようになってきました。予防医療を構成するのは健康診断、予防接種、そして生活習慣改善の三本柱です。

ここでは、健康診断について考えていきたいと思います。

健康診断は所属する会社の福利厚生で、毎年受けている人も多いと思いますが、実際にその意義を深く考えることはないかもしれません。健康診断にはどのような意義があるのでしょうか。

 


「一般健康診断」には受診義務がある


みなさんが一般的に毎年受けている「一般健康診断」というのは、その実施が法律で義務づけられているものです。労働安全衛生法は、「事業者は労働者に対し、医師による健康診断を行わなければならず、労働者は、事業者が行う健康診断を受けなければいけない」としています(参考文献1より要約)

一般健康診断としては、以下の11項目が労働安全衛生規則で定められています(ただし、年齢によって若干の差異があります)(参考文献2)

・既往歴および業務歴の調査
・自覚症状および他覚的症状の有無
・身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
・胸部エックス線検査
・血圧の測定
・尿検査(糖、蛋白)
・貧血検査(赤血球数、血色素量)
・肝機能検査(GOT, GPT, γ-GTP)
・血中脂質検査(トリグリセリド、HDL、LDL)
・血糖検査
・心電図検査

この中身を噛み砕いて見ていきたいと思います。まず「既往歴」というのは、これまで患った病気のことです。これらの情報を知ることで、持病に対して適切に治療が行われているか、今の業務で体調を崩しえないかということがわかります。

 

一方の「業務歴」は、一見健康と関係がないように思われるかもしれませんが、業務内容によってリスクのある健康問題が変わってくるので重要です。

身長、体重から割り出されるBMIは肥満や低体重(やせ)の定義に用いられているものです。BMIは[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]で算出できます。世界的に22が「理想」とされ、アジア人では25以上を肥満、18.5以下を低体重と定義しています(参考文献3)

また、腹囲も肥満の指標として用いられており、男性85cm、女性90cm以上を基準にしています。この数値を超えた場合、肥満の合併症の評価が必要になります。