もちろんどんな人でも、向き合っている相手を自然と観察し、その観察によって会話をしています。相手の様子や反応を見ることは当然のこと、コミュニケーションに絶対に必要なことです。ただ、あえて「人間観察が好き」と表明する必要があるのかな。

「観察」は、職業的研究者でない限り、それ自体で価値のある行為ではないと思います。観察して、観察結果をもとにコミュニケーションする。観察して、観察結果をもとに仕事の戦略を立てる。そんな風に、観察はなにかに役立ててなんぼ。大切なのは、あくまで観察の目的である「なにか(人間関係を良好にする、仕事をうまく動かす)」です。

一方で、趣味は特に目的がなくても、個人的な楽しみのためにするものですね。「人間観察が趣味」と言われてユミコさんがとまどったのは、「観察って、なにか目的があってするものではないの?」という違和感もあったのかもしれません。

 


好き・嫌いのジャッジの前に、「面白い」ボタンを押す!


人間観察がちょっとした緊張感を相手に与える「趣味」なんだということは、心の片隅に置いておいた方がいいのかもしれないです。それが、ピアノ演奏やランニング、読書などの趣味との違いです。

ただ最後に一つ、ユミコさんにお伝えしたいことがあります。それは、「人間観察」が日常を生きやすくする便利な「モード」だということ。

色々な価値観を持つ人と出会いながら生きていると、「どうしても受け入れられない人」が目の前に登場することがあります。悲しいことに。「丸ごと無理!」という人もいれば、「この人のこういうところは好きだけれど、こういうところは無理」という人もいます。

自分の好き嫌いを優先して、ばっさばっさと「切り捨てゴメン」したっていいのかもしれません。そうできたら楽ですね。でも、なかなかそうはいかないことが多いのが人の世の常。

そんなとき、自分の中に「人間観察モード」を起動させましょう。「好き」OR「嫌い」のボタンを押す前に、ひとまず「面白い」ボタンをサッと押しておくイメージです。このボタンを押すことで「人間観察モード」が起動し、目の前にいる相手は、「私が受け入れられない人」から「私にとって未知で、興味深い観察対象」に変身。自分の感情と相手を切り離して、冷静に相手を眺めたり、関わったりすることができるようになるのです。

……考えてみると、「人間観察が趣味」という人は、人間観察することで自分の心を守ろうとしている繊細な人なのかもしれないですね。

皆さんは、人間観察好きですか?
 

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構成・文/梅津 奏


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