自分が歩んできたキャリアに自信が持てない。今の仕事を続けるべきか迷っている。そんな方は、転職活動のマストアイテム「職務経歴書」と向き合うことで、悩みが軽くなるかもしれません。この連載では「職務経歴書 添削サービス」を体験した、異なるキャリアを持つ女性3人のカウンセリングの様子を取材。三者三様の「職務経歴書」完成までの過程からは、あなただけのキャリアを慈しみ、肯定していくためのヒントが見つかるはずです。

 

カウンセリングを務めたキャリアコンサルタントの島谷美奈子さんの言葉を中心に、今回も新卒入社・転職経験ゼロのSさんのキャリアを紐解きます。

\カウンセラー/
株式会社Waris
島谷 美奈子


20年以上にわたり人材ビジネス業界にて人材活用支援・キャリア支援に従事。若手からシニア層まで延べ6000名以上のカウンセリング実績を持つ。現在は、再就職セミナー・キャリア開発セミナー講師、職場環境改善推進などに従事。2021年法政大学大学院修了。専門はサステイナビリティ学。国家資格キャリアコンサルタント、プロティアン認定ファシリテーター、プロフェッショナル&パラレルキャリア支援アドバイザー。

Warisの「職務経歴書 添削サービス」とは?
会社員、フリーランス、離職中など、それぞれの立場に合わせて、女性のキャリアと最新の求人・転職市場に詳しい経験豊富なキャリアカウンセラーが職務経歴書の添削を行い、女性ならではの多様な経験や強みを言語化します。60分間のオンラインセッション付き。詳しくはこちら

\相談者/
Sさん(40代)

地方の金融機関に新卒で入社して以来、約20年にわたり勤務。支店の異動やジョブローテーションで様々な業務を経験したのち、現在はマネジメント職を務める。

●応募の動機は?
「コンプレックスというわけではないですが、これまで一社の経験しかなく、自分は果たして何を身につけてこられたのか、キャリアを客観視できればと思い応募しました。職務経歴書を書いたのも今回が初めてです」



「ジョブローテーション」が意外な強みを発揮
 

Sさんは「今の仕事しか経験がない」ことで、ご自身のキャリアが他でも通用するのか、とお考えのようですが、1社に腰を据えて勤務してきたからこその強みがあります。Sさんの経歴をおさらいしてみると、預金係、融資係、渉外係と「ジョブローテーション」によって様々な業務を経験していらっしゃいますよね。

※ジョブローテーション……社員の能力開発を目的に、人事計画に基づいて定期的に職務変更を行う戦略的な配置転換のこと。

ジョブローテーションについては「自分から希望した職種じゃないし……」と捉えがちですが、様々な業務を経験したことが、異業種でも好印象を与える可能性があるのです。Sさんは職務経歴のエピソードヒアリングで、以下のようなことをおっしゃっていました。

・渉外係について
Sさん:
商品を企画して、取引先の経営層に提案する業務です。営業目標が張り出されるので、目標達成のために、自分なりに方法を考えてセールスをかけていました。はじめは相手にしてくれなかったお客様が、足繁く通ううちに契約を結んでくださったことが嬉しかったです。信頼関係を築けたことで従業員の皆さんにも商品をすすめてくれて、支店で成績トップになれたこともありました。


経歴の棚卸しで見えた「意外な職業」の可能性
 

お話を伺っていると、渉外係は、他の業種だと「企画営業」と言い換えられます。地道な提案の積み重ねによって経営者の信頼を獲得したというSさんのエピソードは、他業界でも強みになるはず。高額商品を売る職種、例えば以下のような仕事です。

・不動産、住宅販売
・保険会社、証券会社、カード会社
・研修会場斡旋などのホテルの売り込みの仕事 など

ご自身では「ジョブローテーションのうちのひとつ」と考えていても、新しい可能性を広げるヒントが隠れています。自分の経歴を多角的に見つめてみましょう。

金融知識だけでなく、いろんな業界のお客様を知ってらっしゃることも「金融業界」出身者の強みのひとつ。企業と企業がアライアンスを結ぶためのコンサルティング業を行っている会社など、求人に「金融業界の方歓迎」と書いている企業も選択肢に入れて検討するといいかもしれません。

マネジメント、接客、企画立案ができ、地域密着志向のSさんは、ビジネスホテルの支配人などにも適性がありそうです。50〜60代で転職する方も多く、売上や予算管理など、金融機関の経験を活かすことができます。