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家屋の断熱化は国民の健康にも大きな効果を発揮します。温かい家に住んでいる人は、寒い家と比較して疾患にかかる割合が低く、高齢になっても認知力が低下しにくいことは、すでに科学的な事実として証明されています。家の中の温度差がヒートショックを引き起こすという話は多くの人が耳にしていると思いますが、断熱化によって健康のリスクを大幅に低減できるのです。

問題は費用ですが、筆者は政府が本格的な補助を実施すべきだと考えます。

先ほど説明したように、家屋の断熱化は、停電時のリスクを軽減する効果がありますし、国全体として省エネ化も進められるので、極めて有効なインフラ投資となり得ます。全国でこうした工事を進めていけば、景気対策にもなるでしょう。

 

景気対策として政府が公共事業を行うことの是非については以前から議論の対象になっていますが、断熱化投資が大きな効果を発揮することはすでに分かっていることですから、予算を確保して投資する価値は十分にあると考えるべきです。家屋というのは全国に存在しているので、ある地域だけに予算の恩恵が及ぶわけではなく、地域格差という点でも意味があります。少なくとも、これから建設される物件については、相応レベルの断熱化を義務付けるくらいの取り組みがあってもよいのではないでしょうか。

断熱化された家は、日本の気候に合わないという意見が一部にあるようですが、それは単なるイメージと思われます。


実際、筆者の家も、窓の断熱化を実施しましたが、冬、暖かいのはもちろんのこと、夏でも冷房があっという間に効くので極めて快適です(冬の早朝、暖房を付けていなくも、冷え込まないのが何より助かります)。新築物件では高度な断熱処理をするケースが増えてきましたが、新しい物件が不快で生活できないという話は聞いたことがありません。断熱化でうまくいかなかったケースの大半は、断熱設計や施工のミスという技術的なものだと考えられます。

断熱化工事は、そうでない工事と比べて難易度が高く、業務に従事する人には相応のスキルが必要となります。従事者の職業訓練を同時に進めることで、賃金アップも見込めますし、ここで獲得した技術は長い期間にわたって経済に良い影響を与えるはずです。


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