「料理」「運転」「仕事」はゆずれない!


ベッド周辺にカーテンをひいて一人になった私は、これからのことをつらつらと考えました。

何とか年内には、家に帰ろう。ただ帰るだけじゃなく、夫や子どもたちに迷惑をかけないくらいにまで回復しなければ!

先ほど診察室で「リハビリの目標は、何かありますか?」と担当ドクターに聞かれた私は、とっさに「料理、運転、仕事です」と答えていました。一人でトイレに行けもしないのに、何を大それたことを!と思われていたに違いありません。

でも私にとって、この3つは絶対にゆずれないものだったのです。

記念すべき、転院後初のディナー。魚率はとても高い! フルーツがついている日は、とてもうれしくなるのでした。

まずは料理。私は我ながら「バカなんじゃないの?」と思うくらい、「ちゃんと料理を作って、家族に食べさせる」ことを意識してきました。

結婚まもないころから会席料理の教室に通い、はや10数年。魚もだいたいさばけるし、おせち料理の伊達巻きや鴨のロースト、栗きんとんなども作ります。また娘は魚介が苦手で、息子&夫は大好き。夕飯の食卓には、毎晩肉と魚介、両方のメニューを必ず出すようにしていました。

 

忙しいときほど凝った料理を作ることで、自分のバランスをとっていたのかもしれません。料理のレシピ本も大好きで、何冊か制作にも携わってきました。

というわけで、私にとって「料理をしない人生」はありえません!

続いて運転。18歳で免許を取ってから、車は常に運転してきました。ちなみに夫は筋金入りのペーパードライバー。今の車は私が自分で選んで、自分で買った愛車です。

入院後は車イス、もしくは杖に頼っての生活になるでしょう。だったらなおさら、「足」としての車が絶対に必要です。自転車に乗れない以上、子どもたちの送り迎えのためにも必須でしょう。

最後に仕事です。これまで四半世紀以上、当たり前にしてきた編集・ライターという仕事。今さら、ほかに何かできるとは思えしないし、手足が思うように動かない以上、新しいことをするのはきっと難しいでしょう。

今回、私が倒れたことで、いろいろな人に迷惑をかけてしまいました。「待っているからね」と言ってくれている人のためにも、復活したい……!

娘は私立中学を目指して受験勉強の真っ最中です。夫も私と同じフリーライターのため、何の保証もありません。今回、私が一定期間無収入になることも、なんか後ろめたいのでした。

しかも私自身、「仕事をしていない私」がどうしても想像できないのです。

以前と同じ形ではなくても、料理と運転、仕事ができるまでには復活したい。私は新しいベッドに横たわりながら、長期間にわたるリハビリ生活への決意を固めたのでした。

次回は、手、脚、言葉、脳それぞれのリハビリについてレポートします。

文/萩原はるな
写真/萩原はるな、Shutterstock
構成/宮島麻衣

 

 

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