「“秀吉七品”って、実在してんの? どっちなん?」リアルさを突き詰めないとアカンと思いました


第一作目の『嘘八百』から、とても順調に第三作目である最新作の『嘘八百 なにわ夢の陣』まで辿り着いたという印象ですが、実際はどうだったのでしょうか。

佐々木蔵之介さん(以下、佐々木):この三作目をつくると決まったのは二作目が終わって、わりと早かったような気がします。それよりも、二作目をつくると決まったときのほうが驚きましたよね。「え? ウソ、やるの?」って(笑)。で、三作目は大阪。大阪の堺からスタートした話が、京都に行き、また大阪に戻って来ましたね。

今井雅子さん(以下、今井):今回は「大阪城でやってほしい」とプロデューサーから話がきたんです。一作目は千利休、二作目に古田織部ときたから、次はもう豊臣秀吉しかいないという話は、すでに陶芸家の檀上先生としていたんですが、秀吉で何すんねんってところがまったく白紙で(笑)。そこを考えるのがいちばん大変でした。

佐々木:その秀吉から、“秀吉七品”という設定を思いついたわけですよね。最初に脚本を読んだとき、「これはホンマの話か?」と一瞬首をひねったんです(笑)。え、実在してんの? どっちなん?って、なりました。それぐらいリアルさを持ってつくっとかなアカンってことですよね。

今井:七品にしようとなったのは打ち合わせのときでした。私は「鳳凰」一品だけで考えていたのですが、武監督と共同脚本者の足立さんから「コレクションにしたら面白いんじゃない?」「秀吉七品の最後の一品にしよう」というアイデアが出たんです。なるほどって思いましたが、同時に「お茶碗ひとつつくるのも大変やのに、そんな七品もつくったら撮影に間に合わんのとちゃう?」とも(笑)。結局七品にしたことで、一作目、二作目との違いが出たと思います。

 

佐々木:なるほど。そんないきさつがあったんですね。しかも今回は怪しい商法みたいなのも出てきましたよね。

今井:これ、実は私が和牛商法で損をしたことを打ち合わせで話したらウケて(笑)。で、そういう“上手い話に夢を見る”みたいなことを入れようってプロットに書いてたんです。そしたら、足立夫人も牛で損をしていたことが発覚して……。「うちの恥ずかしい話を脚本に入れるなんてどうかしている!」と足立さんが問い詰められて、「いやいや、これ今井さんの話だから」って言ったという嘘みたいな話がありました。みんな、結構自分の身の上話を切り売りして仕事しているんですよ(笑)。