政府はかつてマイナンバーカードを普及させないと行政のデジタル化が進まないといった趣旨の説明をしていましたが、これは正しくありません。カードの保有というのはマイナンバー制度全体のごく一部分でしかなく、カードがなくてもマイナンバーシステムは何の問題もなく運用することができます。カードがあれば利便性が多少、向上するというだけの話に過ぎません。

しかし政府は、どういうわけかカードの普及ばかりを最優先し、本来、実施しておくべきデータ整備をおざなりにしたままシステム連携に邁進し、惨憺たる結果を招いているのです。

写真:つのだよしお/アフロ

一部報道では、政府がここまでカードの普及を急ぐことの背景には、何らかの政治的・ビジネス的利権があるといった指摘も出ているようです。本当のところは分かりませんが、これだけ多くのトラブルが発生することが分かっていながら、カードの普及だけをゴリ押ししている状況を見ると、何かウラがあるのではないかと疑われても仕方のないことだと思います。

マイナンバーは行政デジタル化のカギ握る制度であり、各国にIT化で後れを取った日本にとって、重要な政策であることは間違いありません。この大事な制度をしっかりと運用するためにも、杜撰な状態でカードの普及を進めることだけはやめるべきでしょう。

政府は勇気を持ってプロジェクトを一旦停止する決断を行い、問題を解決してから再スタートすべきだと筆者は考えます。その方が結果的にはトラブルは少なくなりますし、行政のデジタル化もうまくいくはずです。

河野氏は突破力や指導力のある政治家と言われています。もしその力量がホンモノなのであれば、たとえ政治的に難しい状況であっても、一旦立ち止まるという決断を下せるはずです。河野氏の政治的力量がまさに試されているといえるでしょう。

 

 

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