『挫折からのキャリア論』(山口真由/日経BP)

本書発売に合わせ、日経xwomanで改めて山口さんのインタビューが特集されています。

挫折からのキャリア論(全6回)>>

本のプロローグで、山口さんはこの本をつくった理由を語っています。

上の世代は自分の「弱さ」を下の世代にもっと開示しなくてはならないと思います。――『挫折からのキャリア論』より

きれいに編集された成功談ではなく、キャリアのはじまりから今現在までどんな挫折があったかを、当時の感情も交えて話すこと。そうすることで、下の世代は「この人はこんなに心を開いてくれた」と身近に感じ、今の悩みや苦しみは自分だけのものではないと励まされるでしょう。

山口さんがこんなカミングアウトをしているのは、世間の注目を引きたいとか、自分を偽っていたことが心苦しいからという理由ではありません。

「ロールモデルがいない」と悩む若い女性たちを見て、「自分たちや更に上の世代が、弱さを見せないようにしてきたせいかもしれない」と反省し、「まずは私自身から弱さを開示しよう」と決断したのだと思います。

そういった意味で、この本は「山口さんよりも下の世代に向けた自己開示」と、「山口さんと同世代以上の人に向けた、自己開示のすすめ」という二つの意味づけがある一冊です。

 

挫折を話すことは、自分のためにもなる


ミドル世代がこの本を読んだら、「こんな失敗、自分にもあったな」「山口さんのように、20代の頃からたくさんの挫折を経て、今の自分がいるな」と感じるのではないかと思います。

いつもであれば「こんな話、恥ずかしい」と自分の中に封じ込めてしまいそうですが、ちょっと周りを見渡せば、昔の自分に似た人たちがいませんか?

「自分がアドバイスするなんておこがましい」と尻込みしたくなるかもしれません。しかし、「自分の失敗談を披露する」のであればどうでしょうか。表面上とりつくろった空虚なアドバイスよりも、実感のあるエピソードの方が人には強い印象を与えます。その話をどう受け取るか、学びを得るのか得ないのかは相手に任せましょう。極端な話、「えー、この人いつもかっこつけているのに若い頃はポンコツだったのね。うける!」で終わったとしても、親近感をもってもらえたと思えば話す意味はあるのではないでしょうか。

どういうコメントを返してくれる人かで、その人の深さも分かります。「この人は一見するとキラキラしているけれど、傷つくような経験もたくさんしているんだ。だから私の話に共感して、学びの多いコメントを返してくれるんだ」と気づくこともあります。――『挫折からのキャリア論 レジリエントに生きる』より

話す相手は、年下世代に限らないかもしれません。周囲の人に自己開示してみることで、その人との新しい関係がはじまる可能性もあります。また、思い出すのも辛いと感じていたことを言葉にすることで頭と心が整理できたりすることもあるでしょう。

これまで心にしまってきた過去の挫折を、一度言葉にしてみませんか。私たちの人間関係に、意外なケミストリーが生まれるかもしれません。


文 /梅津奏

 


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