「老いた姿」を察されないようにしていた


4ヶ月前まで、父は「要支援1」だったのですが、その頃、ちょっとした事故が重なりました。1人で外出をして、乗ろうとしたタクシーの開くドアにぶつかって転倒してしまい、足腰を痛めたり、浴室で熱いお湯を出してやけどしてしまったり……。

ただ、日頃、父の兄弟が会いに行ってくれていたのと、命に係わるような事故ではなかったので、私は「大丈夫だろう」と軽くとらえていたのです。
そうしたら、あるとき、ヘルパーさんと在宅医療の先生に呼び出され、こう言われたのです。
「軽度の認知症にもなっているし、そろそろひとり暮らしは厳しい」と。

そのとき初めて、「え? そこまで老化が進んでいたんだ?」と驚きました。なぜなら、当時、私は月1回ペースで、父親の家に行っていましたが、父は「衰えている姿」を見せなかったので、異変を感じず、毎回、父と楽しく会話をしては、安心して帰っていたからです。

 

介護施設が合わないタイプもいる


とはいえ、高齢者施設に入れるかどうかは、話は別。父はお酒とタバコが好きで、「やめるくらいなら死んだほうがいい」と思っているタイプなので(苦笑)、都内で条件、予算面で入れそうな施設は見つかりません。
なによりも、自由が好きな性格なので、「規則正しく共同生活を行う施設」は合わないのです(入居しても、規則違反をして追い出されてしまう恐れも)。

つまり、「父の幸福度」と「周りに迷惑をかける可能性」を考えると、(わがままなことができないくらい)寝たきりの状態になるまでは、このまま在宅での介護を続けるしかないところも……。

ただし、それなりにひとり暮らしでも大丈夫な環境を整えなくては、ヘルパーさんたちを説得できません。
というのも、父は、ゴミをゴミ箱に捨てないほど、そうじが苦手。しかも、食生活も自由気ままで、好きなものしか食べない偏食家。運動はせず、お酒ばかり飲み、タバコを吸い、まさに「健康でいられるはずがない人の典型」なのです。それでは、匙を投げられても仕方ありません。

とりあえず、腹をくくって、「このまましばらくは在宅で介護を続けること」を決意し、父の部屋を大掃除し、テーブルなどを買い替えて、介護しやすい部屋に変えました。
さらに、介護用の「毎日お弁当を宅配してくれるサービス」の利用も開始しました。栄養バランスのとれたお弁当を家まで届けてくれて、なおかつ、そのときの父の安否をメールでお知らせしてくれるのです。近年の介護サービスには色々と便利なものがあるのですよね。

また、タバコに関しては、体の負担の少なく、火事のリスクも減る電子タバコに少しずつ切り替えてもらうように父を説得。そうやって少しずつ、在宅介護ができる環境に整えていきました。

「自己管理してこなかった人」の老後は、難易度が高い


つくづく思うのが、家事や食事など、「自己管理をきちんとしてこなかった人」の老後は、本人はもちろんのこと、周りも大変だということ。70代後半になって改善できる可能性は低いですしね。

介護はきれいごとではいかないところがあります。お金の問題もあるし、1人で生きていけない状態になった分、父には我慢してもらうことも増えてきます。何度も喧嘩し、話し合い、環境を整えていくことの繰り返しです。

不思議と、高齢になると、子供っぽくわがままな性格にもなってくるところも。それもあって、ときどき私は、まるで母親が子供を叱るように、父に説教してしまうことがあります。
ただ、そんなとき父は、「娘の小言」だから(大目に見て)聞いてくれているところもあるのかもしれません。

歳をとると共に認知力が落ちてきた父ですが、「あること」になると、頭がシャキッとします。そんなとき、「老後に大切なものは何なのか」を感じます。
次のページで紹介します。