一部の世帯では、マンション購入を諦め、生涯、賃貸で通すことを検討し始めているようです。持ち家か賃貸かという議論は以前から存在していましたが、マンション価格がここまで高騰すると、賃貸派に有利になっているようにも見えます。

過去10年でマンション価格は1.5倍近くに上昇しましたが、一方で、賃貸の家賃はあまり上昇していません。ところが、その傾向に大きな変化が生じ始めています。不動産情報サービスのアットホームの調査によると、東京23区における7月のファミリー物件(50〜70平方メートル)平均家賃は前年同月比10%と大幅な上昇となりました。

日本では法律上、借り主が圧倒的に有利になっており、大家さんは一方的な家賃の値上げはできません。このため借り主が引っ越しして、新しい住人が入ってくるタイミングで家賃の引き上げが行われますから、不動産価格の上昇と家賃の上昇には2年程度のライムラグが生じるケースがほとんどです。

イラスト:Shutterstock

10年で不動産の価格が1.5倍になっている以上、新しく物件を購入した所有者は、家賃も1.5倍にしなければ、採算が取れません。23区において家賃上昇が顕著になってきたということは、そろそろ他の地域でも家賃が上がり始めるサインと考えてよいでしょう。

 

それでも賃貸であれば、仕事や生活の状況に合わせて場所やグレードを変え、柔軟に対処できるというメリットがありますから、価格高騰が慢性化している持ち家購入よりは、当面のリスクは低いといえます。しかし家賃がいつまでも同じ水準であると勘違いしてしまうと、インフレの時代には大変なことになってしまいます。時間差があるとはいえ、家賃も上がっていくという現実について、理解しておいた方がよいでしょう。

もっとも不動産は地域によって価格差が大きい商品でもあります。これからの日本は人口減少が進みますから、人口が減っていく郊外などは、不動産価格が値崩れする可能性があります。新築にこだわらなければ、場合によっては激安で物件を購入できるチャンスですが、利便性が悪い地域では、公共交通機関のサービスが止まったり、スーパーやコンビニといった小売店が撤退するリスクが否定できません。

持ち家vs賃貸というのは、永遠の論争テーマであり、最近はそれに加えて人口減少による地域格差というやっかいな問題も絡み合っています。どれがベストという答えはありませんから、自身のライフスタイルに合わせて最適解を見つけるしかなさそうです。
 

 

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