「勉強力」より「世渡り上手力」が必要不可欠

 

川良 後藤さんの書籍『新しいスキルで自分の未来を創る リスキリング【実践編】』でも紹介されていますが、今まで以上に注目されるスキルとして「ストリートスマート」という考え方が非常に面白いなと思いました。これはどういうものですか?

後藤 人に溶け込む力、周囲に対する観察力、状況を理解する判断力、トラブルを回避する力、生きていくための知恵——そうしたスキルのことを「ストリートスマート(street-smart)」といいます。ストリートスマートは、人生経験や実際に困難を乗り越えることで培われるもの。日本では「世渡り上手力」というと分かりやすいかもしれません。

対比されるものには、「アカデミックスマート(academic-smart)」があり、これは勉強が得意な人という意味です。これから仕事は生成AIが変えていくでしょう。ですからアカデミックスマートよりもむしろ、ストリートスマートの「世渡り上手力」の方が、全ての人に必要不可欠なスキルになっていくと感じています。

 

川良 「世渡り上手力」は、どういうふうに習得すればいいんでしょう。

後藤 とにかく「やったことのないことに取り組む」ことです。そこから多くの失敗をするということ。そうすると、人間は失敗をしたくないので学ぶんです。事前にトラブルを回避できたり、生きていくための知恵がついたりするんですね。

川良 生成AIが色々な仕事に置き換わる時代においても、このストリートスマートという生きていくための知恵が必要で、これはもう人間にしか習得できないスキルということなんですね。

後藤 正解を出す仕事は、AIに次々とバトンが移っていくわけです。だから「検索」から「探索」に変わりましょう、と。正解を「検索」する力ではなく、問いそのものを「探索」する力が、これから人間には求められていくのではないでしょうか。