何か伝えたくなってしまう私には「ただそこにいる」というのは新たな体験


ーー映画『唄う六人の女』は、“異色のドラマ”と言われる『オー!マイキー』や映画『ミロクローゼ』で独自の世界観を展開してきた石橋義正監督によるオリジナル作品です。水川さんは、この作品で水川さんが演じているのは、不思議な森に住む謎の女=「刺す女」です。

水川:石橋監督の作品はどれも独創的で不思議な世界観を湛えていますが、台本をいただいたときはどんな映像になるのか全く想像がつきませんでした。だからこそそんな「想像できない世界」に自分を委ねてみたいとも思いました。

 

水川:「刺す女」はすごく不思議な役で、監督からは「表現をしない」「リアクションをとらない」「無表情で、でも凛としていて欲しい」と言われました。「言葉をなくして余白を持たせることで、女たちが何を思っているのかを観客に想像させたい」と。

 

突き詰めれば、「ただそこに存在する」が役のテーマだったと思うのですが、それがとても難しくて。「刺す女」をはじめ、不思議な森に住む女たちは、行動の由来が「気持ち」ではないんです。普通の人が動くときって、「この人は悪い人だから懲らしめてやろう」みたいな、元になる感情や意図があると思うのですが、それが全然ない。例えば虫が攻撃されると攻撃をし返すような、反射的なものなんです。

一方、私は生身の人間ですから……目の前で他の役者さんがお芝居をされていると、ついリアクションしたり、何かを伝えたくなってしまう(笑)。それを我慢して「ただそこにいる」、感情をなくして「反射的に反応する」、というのはとても大変で、だからこそ新鮮な体験でもありました。